坂本龍一さんの『コモンズ:スコラ ピアノへの旅』にとても嬉しいレビューをいただきました!
掲載されたのはタワーレコードのフリーペーパー『intoxicate』の最新号#154、
評者は板倉重雄さん。「そうそう、そうなんですよ!」と思わず声を上げたくなったんですが、
音楽さえも超えた芸術論となっているのが実にユニークだ。
前半では鍵盤楽器の発展史を追いながら、ピアノという楽器の本質(音が粒状、12音しかない、楽譜に表現しやすい)を読み解き、
後半ではプレイリストの20曲に触れながら、自らの様々な体験や音楽観(響き、弱音への興味)を縦横に語り尽くしていく。[一部略]
ピアノを多面的に捉え、その不自由さにも斬り込み、広く芸術の本質に迫る内容はまったくスリリング。
哲学的内容にもかかわらず、対話形式の平易な話し言葉で書かれているのも素晴らしい。
という具合に、限られた文字数のなかでこの本の本領をみごとに言い表してくださっています。
担当としてはなんとも嬉しいかぎりです。板倉さん、ありがとうございました!
ピアノには他にも「重くて持ち運びできない」「演奏者が自分で調律するのが困難」「音が持続せずに減衰していく」
といった制約があることが論じられるのですが、それを踏まえると、グールドが演奏中に声を出す(歌う)理由に
納得がいったり、『async』をはじめとする坂本さんの近年の作品や演奏はそうした制約に抗った末の豊かな実りなんだ、
ということが実感できたりします。
ピアノ(鍵盤楽器)成立史のナゾを追う前半もスリリングですし、
ピアノという楽器にとどまらぬ芸術論や時間論などが展開される後半も刺激的。
ぜひご一読ください。