知的で緻密な探究は刺激的──『モーストリー・クラシック』に『ソング&セルフ』の書評掲載

『モーストリー・クラシック』2024年5月号にイアン・ボストリッジ著/岡本時子訳『ソング&セルフ──音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること』の書評が掲載されました。評者は江原和雄さん。

モンテヴェルディ《タンクレディとクロリンダの戦い》をめぐっては「身分制の厳しかったヴェネツィアでなぜジェンダーの役割が交換させられたのか」、シューマン《女の愛と生涯》については「家父長制の色が非常に濃く、現代の歌手は戸惑いを覚えざるを得ない」、ブリテン《カーリュー・リヴァー》にかんしては「[オペラの着想のもとになった]能が男女の区別を超えているように、ブリテンもジェンダーに関係なく人間のオペラとして作曲している」と、本書で取り上げられている作品についての著者の見解を簡潔に紹介したのち、

 クラシックの演奏家は果たして作品の生まれた経緯、時代背景などどこまで知って演奏しているのだろう。本書を読んで、これほどまでの議論のひろがりに驚かされた。著者の知的で緻密な探究は刺激的だ。

と結んで、ご高評いただきました。