クラシック音楽の30年をひもとき、
激動の時代を語り尽くす。
痛快無双のクラシック音楽談義!
カラヤン、バーンスタインが逝き、
アバド、クレーメルが新しい道を開拓。
そしてドゥダメル、クルレンツィス登場。
古楽運動にアメリカの没落を重ね合わせ、
マーラー・ブームを佐村河内事件の淵源と喝破する。
博覧強記の思想史家・片山杜秀と
演奏史の語り部・山崎浩太郎が
激動の平成時代をクラシック音楽という視点から語り尽くす!
片山──平成という時代に特徴的なことといえば、やはり壮大なまがいものにこそ感動するというところじゃないでしょうか。
山崎──昭和まではクラシックをめぐる言説が男目線中心だったのが、女性の力が増したからこそ、テノール歌手の魅力が堂々と語られるようになった。
片山──森繁久彌と吉田秀和は同い年。これ重要(笑)。
山崎──宇野功芳の存在は、ある意味で司馬遼太郎と似てると思うんです。
※本書はTOKYO FMグループの衛星デジタル音楽放送ミュージックバードで
2018年8月19日に放送したウィークエンド・スペシャル「夏休み自由研究〜平成音楽史」を
採録したものに大幅な加筆をほどこし、同年9月12日におこなった座談会の内容を
「コラム」として追加して編集したものです。
ミュージックバードはJCSAT-2B(スペースディーバ)から日本全国に向けて放送する
高音質“音楽専門”有料放送です。
クラシック、ジャズの専門チャンネルのほか、スタンダードパックでは音楽ジャンル別に
50チャンネルから楽しめます。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
http://musicbird.jp/
プロフィール
片山杜秀(かたやま・もりひで)
1963年宮城県生まれ。思想史家、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。専攻は近代政治思想史、政治文化論。
2008年『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテスパブリッシング)により吉田秀和賞とサントリー学芸賞を受賞、2012年『未完のファシズム』(新潮選書)により司馬遼太郎賞を受賞。その他の著書に『クラシック迷宮図書館(正・続)』『線量計と機関銃』『現代政治と現代音楽』『大東亜共栄圏とTPP』(以上アルテスパブリッシング)、『鬼子の歌』『近代日本の右翼思想』(以上講談社)、『未完のファシズム』(新潮社、司馬遼太郎賞)ほか多数。
NHK‒FM『クラシックの迷宮』のパーソナリティとしても活躍。山崎浩太郎(やまざき・こうたろう)
1963年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。
演奏家たちの活動とその録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。
日本経済新聞の演奏会評、専門誌『レコード芸術』『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に寄稿するほか、衛星デジタルラジオ ミュージックバードTHE CLASSICのパーソナリティなどを務める。著書に『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、共著書に『栄光のオペラ歌手を聴く!』(音楽之友社)、訳書にジョン・カルショー『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)がある。
ウェブサイト「山崎浩太郎のはんぶるオンライン」http://www.saturn.dti.ne.jp/~arakicho/田中美登里(たなか・みどり)
1955年愛媛県生まれ。東京藝術大学楽理科卒。ラジオ・パーソナリティ。
放送各社で女性が初めてニュースを読むようになった1979年、TOKYO FMにアナウンサーとして入社し、90年からディレクターに。89年からボーダレスな視点で制作・出演している『トランス・ワールド・ミュージック・ウェイズ』では、東京のストリート・ミュージシャンを取材した「泳ぐ楽園・東京版」でギャラクシー・ラジオ大賞、「小笠原:リンクする歌の島」で芸術祭放送個人賞を受賞。
2002〜18年ミュージックバードTHE CLASSICプロデューサー。
CONTENTS
「オレたちの音楽史」へようこそ!(片山杜秀)
平成の始まり、昭和の終わり
1989年の世界情勢
カラヤンとバーンスタイン
バブル期CD花盛り
冠コンサート・象の《アイーダ》・三大テノール
♯MeeToo運動──女性目線のクラシック
マーラー全曲演奏会
朝比奈隆のブルックナー
死せるカラヤン、『アダージョ・カラヤン』を流行らす
オウム真理教オーケストラ「キーレーン」
阪神・淡路大震災5日後、朝比奈隆、都響に降臨
米同時多発テロ後の世界
民族派&超ジャンル
昭和を代表するピアニスト中村紘子逝く
オイル・マネーとオーケストラ①──ドゥダメルとエル・システマ
オイル・マネーとオーケストラ②──クルレンツィスとムジカエテルナ
3.11──無力感と復興ソング
佐村河内事件とポストモダンの完成型・新垣隆
ハッタリ・キッチュ・まがいもの
グローバリズムに反撃するヨーロッパ古楽ブーム
ピリオド楽器による《春の祭典》
戦後日本の最高傑作──小澤征爾
本土決戦としての東京オリンピック
column❶ 平成の指揮者
column❷ 平成のレコード店
column❸ 平成の作曲家
column❹ 平成のオーケストラ
column❺ 平成の音楽書
column❻ 平成の演奏家
column❼ 平成の音楽祭
おわりに──群雄割拠の音楽史を振り返って(山崎浩太郎)
平成音楽史年表(作成:渡邊未帆)