ARTES インフォ*クリップ[vol.101]アルテス十大ニュース&ベスト・オブ・2017!号

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ARTES インフォ*クリップ[vol.101]2018/1/3
アルテス十大ニュース&ベスト・オブ2017!号
アルテスパブリッシング
http://artespublishing.com
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新年明けましておめでとうございます。
“音楽を愛する人のための出版社”
アルテスパブリッシングを
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

新春第1号のメルマガは、2017年を振り返って
「アルテスパブリッシング十大ニュース」と
スタッフによる「ベスト・オブ2017」をお届けします。
まず十大ニュースからどうぞ!

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■ アルテスパブリッシング十大ニュース
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[1]4月5日、創業10周年を迎える
10年間に発売した書籍は150タイトルを数えました(雑誌『アル
テス』を除く)。これからも1冊ずつ積み重ねていきます。

[2]過去最高20タイトルの新刊を発売
またもや記録を更新してしまいました……。重版は12タイトル。
2017年新刊で最大のヒットは『《ニーベルングの指環》教養講
座』でした。

[3]全国各地のお店で10周年記念フェア開催
ぜんぶで31もの書店・楽器店でアルテスのフェアを展開していた
だきました。年明け早々にはジュンク堂書店渋谷店で新たにスター
トします。

[4]アルテス・フレンズ&サポーター会員の募集を開始(4月)
後者はとくに経営面からアルテスを支えていただこうというもの。
沢山の方にご参加いただき、感謝しています。

[5]初めての電子書籍を10タイトル発売(4月)
正確には「既刊の電子書籍化」を初めて手がけました。『困難な結
婚』だけが突出して売れましたが、選択肢を増やす意味はあると確
認できたので、今後も増やしていくつもりです。

[6]FM番組《music book cafe》の制作に参画(4月)
ミュージックバードが全国のコミュニティFMに配信している番組
の制作を4月からスタートしました。アルテスの代表二人にとって
は初めてのパーソナリティ体験。

[7]初めてクラウドファンディングを出版に活用して成功(11月)
11月に発売した『ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス』
出版と、その訳者小町碧さんのリサイタル実現のためクラウドファ
ンディングを実施。165人の方から115万3200円の資金をご提供
いただきました。

[8]LFJ公式本とルネ・マルタン本を刊行(4月/2月)
5月に開催されたクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ・オ・
ジャポン」の公式本『ダンスと音楽』と、そのプロデューサー、ル
ネ・マルタンが「成功の法則」を語った『ルネ・マルタン プロデ
ュースの極意』を発売しました。

[9]松田美緒のテレビ・ドキュメンタリー第2弾放送!(11月)
CDブック『クレオール・ニッポン』のシンガー松田美緒がブラジ
ル移民を取材し、現地での歌と人との出会いを追った感動のドキュ
メンタリー番組『移民のうた 歌う旅人・松田美緒とたどる もう
一つの日本の記憶』が日本テレビ系列NNNドキュメント’17で全国
放送され、大反響を呼びました。

[10]新文化、日経新聞、毎日新聞などに10周年インタビュー記事掲載
出版業界紙「新文化」(6月)と、日本経済新聞(8月)、毎日新
聞(9月)に創業からの10年を取材していただいた記事が掲載され
ました。

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■ ベスト・オブ・2017
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【沼倉康介】

◎本
パスカル・キニャール『世界のすべての朝は』(高橋 啓 訳、伽鹿
舎)
マラン・マレとサント=コロンブの師弟関係を描いた『めぐり逢う
朝』(早川書房)の新訳。内容は言わずもがなですが、本全体の
1/3ほどを解説に使っている点が素晴らしいなと思いました。音楽
の本を読む、という営みの大切さを再認識させられます。装丁もと
ても見事です。

佐々木敦『筒井康隆入門』(星海社)
筒井康隆の歴代作品を紹介する、という絶対にどこかから文句が出
そうな内容を丁寧かつ入門書のレベルで整理したという作業それ自
体がすごいのですが、最後の最後にここまで筒井康隆を愛していた
筆者がついに筒井康隆作品に入り込んでいくという展開が泣けま
す。泣ける批評としてどうぞ。

◎漫画
ガース・エニス『ヒットマン』1~5(海法紀光 訳、エンターブレ
イン→KADOKAWA)
メルマガでもすでに書きましたが、DCユニバースがこれまで築き
上げた豊かな世界を台無しにするノリがひどくて汚くて最高なので
した。そして3冊同時発売を果たした偉業を心から言祝ぎたい!!

ビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』
(山口侑紀 訳、花伝社)
1980年前後にモザンビークからドイツへやってきた若い移民たち
を描いたBD。18歳で東ドイツに移り、理不尽な待遇のなかで過ご
す3人の人物をことさらに強調することなくただ静かに描ききるこ
とで、居場所がないことのリアリティが浮き彫りになっています。
労働力不足だとか、治安がどうとか、そういうことを考える前に移
民は人なのだと改めて真剣に捉えなければと考えさせられます。

谷ゆき子『バレエ星』(立東社)
あまりにもぶっ飛んでいる設定、物語、そしてこれを本当に当時の
少女たちが楽しみに読んでいたという事実が本当に狂っていて最高
だと思います。去年出た紹介本も合わせて。

◎CD
HUSKER DU「SAVAGE YOUNG DU」
79~82年に録られたデモ音源などを集めたボックス。
最果ての地でどうしようもなく鬱屈していた中学生時分の妙な高ま
りを思い出し、しばらくはこの周辺ばかり聴き返していました。

EQUIKNOXX「COLON MAN」
ジャマイカのダンスホールユニット。音の太さ、細さはこのくらい
にしておこうとか、こんな音を重ねてみようとか、ふつう考える常
識的観念が西洋人とは明らかに異なってるとしか思えないのでノレ
るのになんか妙な引っ掛かりがあり、良いです。

Kara-Lis Coverdale「Grafts」
ピアノやストリングスが重なって壮大に仕上がりそうなところを寸
前でこらえるような品の良さと、高まりたくないダウナーな欲望が
感じられます。ミニマルに繰り返しながら登っていかない感じはウ
ィム・メルテンに近い気が。

NIDIA MINAJ「NIDIA E MA, NIDIA E FUDIDA」
アナログシンセも声も生楽器もSND的な硬質電子音も使いなが
ら、ずっと異常なハイテンションが維持されていて「音色の生成過
程なんてどうでもいいんじゃい!!」という現代を生きる電子音楽
人間をぶっちぎっていく気概が感じられて非常に好感度が高いで
す。Jlin好きならきっとこれも好きなはず。

◎スポーツ
スーパーボウル51
コンタのラストも捨てがたかったですが、衝撃の大きさでこちら。
最大25点差をひっくり返した凄まじい試合、生きている間に同じ
くらい激しい展開のSBを見ることがあるのでしょうか…。過去の
SBで逆転した最大点差は10点だそうで…。
ちなみに僕は前半終了時点でレディ・ガガのハーフタイムショーを
見ながら「今年はこんなもんかいな」と半分寝ておりまして、後半
早々にATLがさらに点差を広げたところでは風呂を沸かし始めてい
ました。

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【木村元(代表取締役)】

◎2017年個人的回顧
2016年から入社した沼倉が編集者として飛躍、『音楽を考える人
のための基本文献34』『サステナブル・ミュージック』『伶倫楽
遊』の3冊をきっちり仕上げてくれました(『基本文献34』は発売
数カ月で早くも増刷)。やはり2016年からフルタイムで勤務する
鈴木晶子も、N響の編集業務に加えて日々の受注・出荷業務をこな
す大車輪の働き。全国各地での10周年フェアの開催を実現させた重
鎮・小野とともに、アルテスの基礎を支えてくれています。いつも
はN響の仕事に専念している松岡がひさしぶりに書籍を手がけ、
『ウィーン・フィル コンサートマスターの楽屋から』を送り出し
てくれたのもうれしいことでした。

木村は2017年の新刊20冊のうち11冊を担当しましたが、とくに
『シューベルトの「冬の旅」』(2月)、『ソング・オブ・サマー 
真実のディーリアス』(11月)の2冊は、それぞれにさまざまな困
難を乗り越えての出版となりましたが、結果的にはいずれもこれ以
上ないかたちで完成でき、自分にとってもキャリアに銘記すべき年
となったと思います。

船山、沼倉、鈴木晶子の3人が「広報チーム」を組み、広報業務を
組織的に担当してくれるようになったこともとても大きかった。専
門書の出版には「現場での宣伝・販売」が欠かせません。4月から
始まった会員制度「ARTESサポーター&フレンズ」(沼倉が担当)
とともに、読者のみなさんに直接情報を届け、本との出会いをプロ
デュースする試みとして、今後も力を入れていきたいと思います。

会員制度のスタートとともに創刊したメルマガ「ARTESサポーター
&フレンズ通信」での連載「music・book・education」は、これ
まで音楽書の編集者として考え続けてきたことを、この機会に言葉
にしておきたいという思いで取り組んでいますが、毎回身を削る思
いです。やっぱり文章を書くのはむずかしい! 著者のみなさんの
ご苦労を身をもって体験しています。

やはり4月から始まったFMラジオ番組「ミュージックブックカフ
ェ」でのパーソナリティも初めての体験。毎回試行錯誤しながらや
ってますが、ライヴ感を大事にしながらも内容を充実させるってほ
んとうにむずかしい。ゲストのみなさん、MCの新坂穂乃花さん、

その他スタッフたちに助けられながら、なんとか務めております。

こうした成果にもめぐまれましたが、1年を通してみると、計画ど
おりにいかなかったことがあまりにも多く、認めたくないけれど、
身体の衰えを真摯に受け止めるべき時期なんだと痛感しています。
次の10年を充実させるためにも、個人としても会社としても、基礎
になる体力づくりにあらためて取り組んでみようと思っています。

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【鈴木茂(代表取締役)】

◎CD
アイルランド/ヨーロッパ伝統音楽をベースにした日本のミュージ
シャンたちが期待どおり次々に素晴らしい作品を発表してくれた1
年でした(タイトルを挙げたO’Jizoはその代表ということで)。
『Jazz the New Chapter』周りが引き続き刺激的でしたし、アル
ゼンチンやブラジルのシーンも聴くものどれも良くて大豊作。そん
な中でひときわ感銘を受けた、あるいは何度も繰り返し聴いたレコ
ーディング作品をアルバム単位で選んだのが下のリストです。
ほかにもレベッカ・マーティン&ギジェルモ・クライン、カート・
ローゼンウィンケル、ラナ・デル・レイ、コーネリアス、リズ・ラ
イト、高田漣、坂田学、ECDなどが印象に残っています。
また、圧縮音源ではなくCD音質のストリーミング・サービスを秋か
ら使い始めて、ジャンルと新旧を問わず聴きたい音楽を次々に聴く
ことができるようになったことは、CDの登場以来の革命的な変化で
した(Jordi SavallもIdan RaichelもJoana Queirozも聴け
る!)。年末になって聴いたばかりのMoses Sumney、Youssou
N’Dour、Rob Luft、Carlos Aguirre Trio、Rodrigo Carazo(こ
れは2015年のアルバム)などもとても良くて、しばらく聴き続け
ることになりそうです。

坂本龍一『async』
ものんくる『世界はここにしかないって上手に言って』
ハンバートハンバート『家族行進曲』
ティグラン・ハマシアン『太古の観察者』
細野晴臣『Vu Ja De』
カーネーション『Suburban Baroque』
O’Jizo『Via Portland』
Patricio Pietrek Grupo『Pajaro Azul』

◎ライヴ
ついに聴けたマリア・シュナイダー、今年はこれに尽きるといって
もいいほど、何年ぶりかのブルーノートで至福の時を過ごしまし
た。同じくやっと生で体験したヤマンドゥにも我を忘れるほど興
奮。ドーナル&アンディのツアーをお手伝いできたことも光栄なこ
とでした。

ヤマンドゥ・コスタ(2/5 武蔵野スイングホール)
ソウル・フラワー・ユニオン(3/20 渋谷O-West)
ドーナル・ラニー&アンディ・アーヴァイン
 (4/1 晴れたら空に豆まいて、4/2 サムズアップ)
ティグラン・ハマシアン(5/24 浜離宮朝日ホール)
マリア・シュナイダー・オーケストラ(6/8 ブルーノート東京)
コーネリアス(7/11 リキッドルーム)
松田美緒&土取利行(7/30 シアターX)
ものんくる(8/25、12/21 代官山UNIT)
John John Festival(11/12 求道会館)
グレン・グールド・ギャザリング(12/15 草月ホール)

◎本
寄藤文平『デザインの仕事』(講談社)
 本の装丁という仕事の土台と、その上に開ける可能性を教えられ、
仕事の上で大きな示唆をもらいました。

植本一子『家族最後の日』(太田出版)、『降伏の記録』(河出書房新社)
 自己セラピーとしての執筆という次元にまで進んでしまった後者
のラストは圧巻でした。休筆宣言も納得。

村井康司『あなたの聴き方を変えるジャズ史』(シンコーミュージック)
 これからジャズおよびアメリカ音楽のみならず、音楽を語る人は
必読。

猪熊弘子・國分功一郎・ブレイディみかこ『保育園を呼ぶ声が聞こえる』(太田出版)
 日本社会が抱える諸問題の根源がここにある(大意)という國分
さんの言葉に深く強く共感。

水野祐『法のデザイン』(フィルムアート)
 アートにとどまらない様々な分野で、法の役割を確認したうえ
で、法によるイノヴェーションの可能性がクリアに描かれていてワクワクさせられました。

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ARTES インフォ*クリップ   配信数:2474通
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発行日:2018年1月3日
発 行:株式会社アルテスパブリッシング
〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-16-23-303
TEL 03-6805-2886│FAX 03-3411-7927
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