人の心とチェロが織りなす音楽の美しい小品集のようなエッセイ──図書新聞に『シューベルトの手当て』の書評掲載

2月17日(土)付の図書新聞(3627号)にクレール・オペール著/鳥取絹子訳『シューベルトの手当て』の書評が掲載されました。

魂に届くチェロの調べ――音楽が心の奥にたどり着いて起こった奇跡のような物語|シューベルトの手当て
https://note.com/yasushi_kaneko/n/n4237d90260d5

評者は翻訳者・ライターの眞鍋惠子さん。

 チェロによるアートセラピーの物語。人の心とチェロが織りなす音楽の美しい小品集のようなエッセイだ。

患者と演奏者の魂が直接触れ合う瞬間がある。たとえ患者がまばたきでしか意志を表せない病人だとしても、共に歌い奏でて音楽を共有する。自閉症の若者の拳骨で演奏中のチェロの穴が開いても、彼と目を合わせながら演奏を続ける。

 出会った人々とのエピソード、自身や父親の思い出、差し挟まれた自作の詩が、メロディー、リズム、ハーモニーさながら美しいアンサンブルとなり、奇跡のようにも思える音楽の力を聴かせてくれる。各章の冒頭には演奏された曲の名前が記されているから、実際に耳を傾けながら読めば、あなたも音楽の力を実感できるかもしれない。

評文も美しく音楽のように心にしみるものでした。心や体に痛みや悩みをかかえる人、そんな人をそばで見守る人たちにぜひ読んでいただきたい稀有の物語です。