加藤典洋による初めての音楽論、渾身の書き下ろし。
身ひとつで日本のロックに挑む!
音楽とはなにか?
才能とはなにか?
ポップとはなにか?
奥田民生、スガシカオ、じゃがたら、フィッシュマンズ、忌野清志郎、桑田佳祐、
小沢健二、コーネリアス、椎名林檎、曽我部恵一、小島麻由美、スピッツ、町田町蔵 etc……
文芸評論、戦後日本論、アメリカ論などで長年活躍する著者が、初めて音楽批評に挑んだ。数百枚に及ぶCDを聴き続けて選んだ6組の日本のアーティスト── 奥田民生、スガシカオ、じゃがたら、フィッシュマンズ、忌野清志郎、桑田佳祐──を論じた書き下ろし750枚。音楽とは? 才能とは? ポップとは? その本質に深く厳しく迫る!
音楽を聴いていると、だんだん音楽の友人になってくる。でも私は、耳をふさぐようにして聴いた。また書いた。音楽の友人になるまえに、音楽に見知られる前に、まったく音楽を知らない人間として、「音楽」について、「Jポップ」について、「日本のロック」について書きたかったのである。音速に追いつかれない、招かれざる客として。耳をそばだて、すませば聞こえるのが歌なら、ふさげば、──何が聞こえるのか。
本書「あとがき」より……
プロフィール
加藤典洋 (かとう・のりひろ)
1948年山形県生まれ。文芸評論家、国会図書館、明治学院大学をへて、早稲田大学国際学術院教授。東京大学文学部仏文科卒。
1985年、『アメリカの影』(河出書房新社)でデビュー。以降、現代文学批評、戦後日本論など幅広く評論活動を展開している。
著書に『言語表現法講義』(岩波書店、1996年。第10回新潮学芸賞)、『敗戦後論』(講談社、1997年。第9回伊藤整文学賞)、『日本の無思想』(平凡社新書、1999年)、『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』(クレイン、2002年)『テクストから遠く離れて』『小説の未来』(講談社、朝日新聞社、ともに二〇〇四年。第七回桑原武夫学芸賞)、『僕が批評家になったわけ』(二〇〇五年、岩波書店)、『文学地図-大江と村上と二十年』(朝日選書、2008年)、『さようなら、ゴジラたち──戦後から遠く離れて』(岩波書店、2010年)などがある。
CONTENTS
第1部 奥田民生vsスガシカオ
はじめに
奥田民生
1 来歴
広島と共産党
ユニコーン
ソロ
2 ディレンマ
生きると暮らす
「がんばりたくなさ」と詩法
3 たたかい
『服部』/『ヒゲとボイン』
『29』
『股旅』と『E』
Tour——『Lion』
峠と隧道——『Fantastic OT9』から『OTRL』へ
スガシカオ
1 p(ぺー)とH(ハー)
来歴・シングル・海外公演
酸・アルカリ・中性
2 初期性の輝き──『Clover』
『Clover』/『Family』
「前人未踏のハイジャンプ」
「黄金の月」──いる場所の低さ
3 日本と海外
ロンドン公演
日本的/日常的
バー・地べた・空
「Jポップの越境者」解凍ファイル−1
1 椎名林檎|遠くには稲妻。
2 パラダイス・ガラージ|パラダイスとガラージ。
3 フィッシュマンズ|ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ
4 コーネリアス|GOD ONLY KNOWS
5 小沢健二|遠くまで行く1000灯機のように
6 スピッツ|ウサギのバイクの一走り
7 早川義夫|破れた空のした。歌は息絶え絶え。低く飛ぶ。
第2部 じゃがたらvsフィッシュマンズ
はじめに
じゃがたら
1 来歴
キリスト教・清流・奨学金
南部ロック、ウェット・ウィリー、吉田拓郎
亀裂
愚行
2 高圧炉とエントロピー
『南蛮渡来』──駄洒落/空耳
『裸の王様』、『ニセ予言者ども』──リアル/ヴァーチャル
『それから』・『ごくつぶし』──ライヴ/デス
3 東京の空──『君と踊りあかそう日の出を見るまで』
フィッシュマンズ
1 来歴
歴史
佐藤伸治
十字路──『Neo Yankee’s Holiday』
「なにもないこと」──『ORANGE』
2 「なんてったの」──前期
低調なデビュー──『Chappie, Don’t Cry』
悪あがき──『KING MASTER GEORGE』
十字路──『Neo Yankee’s Holiday』
「なにもないこと」──『ORANGE』
3 夕日の中で──後期
転回──I dub fish
密室──ワイキキビーチ/ハワイスタジオ
一〇〇ミリちょっとの浮遊
喪失/到来──『LONG SEASON』
叡智
何もしないでいること
散開──『宇宙 日本 世田谷』
4 夕暮れ──「SEASON」
ギロチンの夢──「ゆらめきIN THE AIR」
未来
『Jポップの越境者』解凍ファイル2
8 ブルーハーツ|「ないこと」と生きる歓び
9 小島麻由美|空の、水たまり。
10 こだま和文|「深く静かに」、「攻撃的」に。
11 曽我部恵一|音楽は新陳代謝する。
12 エレファントカシマシ|Elephant Vanishes
13 町田町蔵|自分と刺し違えて、彼方へ
第3部 忌野清志郎vs桑田佳祐
はじめに
忌野清志郎
1 よくないリスニング
来歴
時期区分
初期の輝き
売れること、劣化すること
2 一九七二年◯二〇〇八年
透明な檻、汚い毛のコヨーテ
一九七二年二月
明るさ
Honesty, Acidity
貧しさ
『COVERS』
3 微笑み
桑田佳祐
1 出生の秘密
仮定と問い
非決定と無意識
曲先、ただの歌詞
殺されるには存在しなければならぬ
曲と詞──「いとしのエリー」
2 全能と不能
アイデンティティをもたないこと
無意識と英語
桑田佳祐の教え
音楽の落人
あとがき
関連ディスコグラフィ
初出一覧