音楽家のKoji Nakamuraさんから川崎弘二『武満徹の電子音楽』へ推薦コメントをいただきました!!
現代のシーンでも活躍されてるからこそ、感じられたことから
川崎さんの志向されている部分にも踏み込んだ内容でたいへんありがたい限りです!
川崎さんの本に出会ったのは、10年ほど前、家具屋で買い物をしていた時だった。家具屋に置いてあった「日本の電子音楽」というタイトルの本は、私の興味をそそった。ちょうどNHK電子音楽スタジオの音源を収録したCD「音の始源を求めて」のリリースもあったからだろう。日本の電子音楽の歴史をそれほど知らなかった私は、その本の内容に驚いた。日本の電子音楽がとてもモダンで先駆的で、柔軟で、独創的で。私の中の日本の電子音楽のイメージは大きく変わった。
新しい本は武満徹の本である。この本を読み始めた前後に、数人の音楽家たちと新しく出会い、各々の理想、描くビジョンのような音楽の話をしていた。「調律された音楽のなかに騒音をもちこむ」この本の冒頭でもでてくる武満徹の言葉と同じような事を皆言っていた。私は奇妙な気分になった。1950年代の若い武満徹と今いる音楽家たちが同じ想いのまま、音楽と自分と格闘している。60年以上前の遠い過去の話ではなく、この言葉への想いはテクノロジーが進んだ今でも本質は何も変わらず今も存在している。それは、我々が日本人だから出てくる感覚なのかもしれない。
この本では武満徹を軸に、知らなかった50年代、60年代の日本のエンターテイメント/カルチャーの様子が書かれている。そして、オリンピック、万博の様子も。これまた奇妙なことに、いま日本は新たなオリンピックそして2025年大阪万博をひかえている。あの時の日本人が何を考え、そして今の日本人が何を選択していくのか。この本、武満さんを通して何か感じるものがあると思う。
Koji Nakamura(音楽家)