日本音楽学会の機関誌『音楽学』第67巻1号に筒井はる香著『フォルテピアノ──19世紀ウィーンの製作家と音楽家たち』の書評が掲載されました。評者は、2018年開催の第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位となり、旋風を巻き起こしたフォルテピアノ奏者の川口成彦さん!
各章について詳細に読み解き、自身の感想や異論、著者の今後の研究への要望なども述べたうえで、
本著は19世紀の楽器製作家が当時の音楽芸術の創造の重要な担い手であったことを鮮明に伝えてくれる。作曲家や演奏家は楽器の存在なくしては音楽を生み出すことは出来ない。だからこそ楽器製作家は重要な芸術家である。顧客(作曲家)の要望にしなやかに応えながら楽器製作家は求められた楽器を生み続け、それがピアノの変容の原動力となっている。現代のピアノでは実現困難な表現を昔のピアノによってようやく表現できることを今日の演奏家が十分に知るべきであることは間違いないだろう。楽器を否定することは作曲家や作品を否定することになりかねない。それほどまでに18世紀や19世紀の楽器製造はひとつの大きな芸術活動であったのだ。
このように、本書の肝であり、川口さん自身も共有する楽器製作家へのリスペクトを記しておられます。
巻末資料である「1791年から1833年までのウィーンにおけるピアノ製作家のリスト」はフォルテピアノに魅せられている人にとってはお宝的資料かもしれない。膨大な楽器製作家の名前とともに当時のウィーンのピアノを取り巻く文化に関して思考することには実にロマンがある。
と、最後はフォルテピアノ奏者らしい感想で締めてくださいました。