6月に刊行した牧野直也著『リマリックのブラッド・メルドー』を、評論家の村井康司さんが『レコード・コレクターズ』9月号で書評してくださいました。
これはある種の“奇書”である、と言っていい。現代ジャズの最重要人物のひとりであるブラッド・メルドーの音楽的分析を中核としつつ、ジャズとは、いや音楽とは何か、という根源的な問いへの考察でもあり、〜CD268枚のガイドでもあり、ベンヤミン、ヘーゲル、ベルクソン、デリダなどについてのブック・ガイドでもあり、著者のアイルランド体験についてのエッセイでもあるのだから。
そう、まさにこの本はたんなるジャズ・ピアニスト論にとどまらない長く深い射程と問題意識に貫かれた異色作なのです。そこを評価していただけて嬉しいかぎりです。
中村とうようや相倉久人が生きていれば、大上段に構えた著者の言説にどう応えたのだろう?
とも村井さんは書かれてますが、ほんとに、このお二人に読んでいただけなくて残念(瀬川昌久さんからはうれしいご感想をいただきました)。
クラシックのとくにピアノと声楽にも多くの字数が費やされていますし、ジャズに強い関心のない方もぜひページを捲ってみてください。なにかしら啓発されたり刺激されたりするものがあるはず。
なお、この〈ポスト・ジャズからの視点〉シリーズは牧野さんの書き下ろしで、第2弾はチャーリー・パーカーの予定です。