12/4朝日新聞と東京/中日新聞に『相倉久人にきく昭和歌謡史』の書評掲載!

今朝の朝日新聞と東京(中日)新聞に『相倉久人にきく昭和歌謡史』の書評が載りました! なんと同日掲載です。どちらもウェブで全文を読むことができますが(朝日新聞東京新聞)、うれしいのでこちらでも評文を引きながらご紹介。

朝日新聞の評者は細野晴臣さん!(『ミシェル・ルグラン自伝』に続いてアルテスの本を採りあげていただくのは二度目です) 平成までを扱っている本書の中で、戦前から戦後にかけての音楽を論じた部分に焦点を当て、こんな風に評して下さっています。

相倉氏は戦前の東京生まれ。戦後生まれの者にはなかなか知り得ない戦時中の逸話や体験を惜しみなく披露する。

戦後生まれの僕は、アアメリカの占領政策と文化の中で育った影響もあり、いまなお「ブギウギ」に心躍らされるが、ブギウギがなぜ日本でも流行したのか。さらに不自由な戦時中、日本歌謡界はいかに息を潜めていたのか。硬軟織り交ぜた自由な対話がインスピレーションを刺激する。

相倉氏は惜しくも昨年物故された。だが最晩年にあっても、氏は生き生きと音楽と人生を語り、残された我々に奥深い示唆を与えている。なかでも近代主義が否定し続けてきた「死」とそれに伴う成長神話、そしてグローバリズムが文化の衰退を招いているとの指摘は必聴に値する。

東京/中日新聞は上野昂志さん。相倉さんを「現場の人であると同時に、畏(おそ)るべき記憶の人でもある」として、こう書いてくださいました。

興味を惹(ひ)かれる指摘や発言は多々あるが、典型的な戦後派だと思われた笠置シヅ子が、すでに戦前、パワフルに歌っていたと知ると、改めて一九三〇年代と戦後の非連続の連続に思い至る。洋楽と日本語の関係などについての話も刺激的だ。

また、榎本健一が坂本九を後継者と見做(みな)していたという証言も興味深いし、山口百恵、松田聖子、中森明菜、河合奈保子らアイドル歌手それぞれの自己意識と表現の関係など、相倉さんならではの洞察に深く納得する。

読み手によって読み取るポイントが変わってくるのは当然のことですが、この『相倉久人にきく昭和歌謡史』の場合、本書がそれだけ多彩な論点を提供する広く深い内容になっていることを証していると思います。日本の歌謡曲やアイドル、ポップスに少しでも興味をお持ちの方にはぜひご一読いただきたいです。