『ミュージック・マガジン』12月号に松山晋也さんの『熱帯の真実』書評掲載!

文章そのものがとにかくややこしい」「まるで迷路に迷い込んだ気分になる」「といって〜哲学科出身者らしい明晰さに貫かれているため、余計やっかいだ」と、まるで訳者や編集者の胸の内を代弁してくれているかのような紹介から始まる『熱帯の真実』評が、『ミュージック・マガジン』最新号に掲載されました(P.218)。評者は、洋邦ジャンル時代を問わず膨大な音楽に精通する松山晋也さん。嬉しいことに1ページを丸々使ってのレビューです。

大小さまざまなエピソードに満ちていて、「読みどころは満載」の本書。トロピカリズモ(トロピカーリア)に主眼を置きつつ、「演劇や映画や文学、政治/社会と多岐にわたる事象が複雑に絡み合ってくる」テキストを読み解いていくには、いささかエネルギーを要しますが、この独特の文体に慣れてくるにつれてそれが快感にすらなってきます。

松山さんが読み解いて下さったとおり、「カエターノ個人の半生記」として、またブラジルの社会や文化の「哲学的考察」の書として、あるいは「ブラジル現代史の貴重な記録」として、などなど多面的な魅力をもったこの『熱帯の真実』ですが、「彼の作品を古い順に聴きながら読むと、ポップ・シンガーとしての姿もより深くリアルに見えてくるのではないか」という指摘はおおいに強調しておきたいところです。

ぼく自身、本書とリンクする70年代の作品をあれこれ聴きながら編集・校正しましたが、本書を(何度も何度も)読んだおかげで、いまひとつなじめなかった諸作がずいぶん身近になりました。リスニングのガイドとしてもあらためてお薦めしておこうと思います。

大冊に正面から取り組んで熱の入ったレビューを書いてくださった松山さんに感謝します。ありがとうございました!(以上太字はすべて評文からの引用です)
                                        [鈴木]