ボストリッジと共に踏み出すアイデンティティをめぐる冒険──『図書新聞』に『ソング&セルフ』の書評掲載

2024年3月23日付の『図書新聞』(3632号)にイアン・ボストリッジ著/岡本時子訳『ソング&セルフ──音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること』の書評が掲載されました。評者は翻訳者/ライターの眞鍋惠子さん。

冒頭、本書を「イギリスを代表する世界的テノール歌手による音楽とアイデンティティにまつわる評論集」と位置づけながらも、「27歳でプロの歌い手となり、30歳で大学を去るまで歴史学者であった」という著者ボストリッジの「少し異色な経歴」を紹介、彼がこの「評論集」を書くことになった必然性を説きます。

各章の内容や取り上げられた楽曲についてていねいに紹介したのち、

 ボストリッジは自分の演奏を聴くのと同様に、読者に本書の複数のテーマや解釈へのさまざまな反応を期待している。音楽は常に多様な問いを投げかけるものだと考える著者は、歌と溶けあうことで直感的なひらめきや答えのないものとの共存を得る。本書では通常コンサート・ホールでは発せられない問いを音楽にぶつけ、読者と一緒に思考をめぐらす。本書が誘うのは、ボストリッジと共に踏み出すアイデンティティをめぐる冒険だ。

このように力強く結んでくださいました。