川成洋さんが『図書新聞』で『まるごと1冊 スペイン音楽の本』を書評

『図書新聞』3617号(2023年11月25日発売)に下山静香著『まるごと1冊 スペイン音楽の本』の書評が掲載されました。評者は英文学者でスペイン史家の川成洋さん。

 なんと大胆な書名であろう。確かに本書は、スペイン音楽史、作曲家と演奏家、作品、踊りと歌、舞台芸術、十都市の音楽散歩、文学史、地理と歴史など実に多様な領域をカバーする、本邦初の本格的なスペイン音楽エンサイクロペディアである。「裸足のピアニスト」の異名をもつ著者が、国内外の演奏会などで大活躍を繰り広げつつ、浩瀚なスペイン音楽の本を上梓するとは驚きである。

と、のっけから、664ページというヴォリュームだけでない本書の「規格外ぶり」を指摘、

 本書の圧巻はなんといっても「作曲家と演奏家」「作品紹介」である。

としながら、1898年の米西戦争での敗戦いらい弱体化した国体を知的に再構築しようとした「九八年の世代」と、その文脈から登場した綺羅星のような20世紀スペインの音楽の巨星たち──グラナドス、トゥリーナ、モレノ゠トローバ、モンポウ、ロドリーゴ、サラサーテ、カザルス、セゴビア、イエペスなど──への敬愛を語っておられます。