『モーストリー・クラシック』に『わが友、シューベルト』の書評掲載

『モーストリー・クラシック』2023年10月号に堀朋平著『わが友、シューベルト』の書評が掲載されました。評者は小島広之さん。

冒頭、

 タイトルから、シューベルト愛を語るエッセイだと誤解されるかもしれない。実際には、重厚な研究書である。

と書きおこし、

しかし、エッセイを思わせるような要素がこの著作に見られることを、「誤解」として否認してしまうのも勿体ないように思われる。[略]本書は、博覧強記の研究者的頭脳と軽妙洒脱なエッセイストの筆が連動する稀有な作品である。

と筆を進めます。

[…]読者にはそれ相応の知識が求められる。それでも本書が喜びに満ちているのは、シューベルトにまつわる細かいトピックを覗き窓としながら、19世紀西洋文化史にひろがる大きなパノラマを提示してくれるからである。シューベルトから世界を理解し、世界からシューベルトを理解する。この往復運動が心地よい。難しいが、息は詰まらないのである。

というくだりは、700ページ近いヴォリュームを感じさせない本書の読書体験を個人の感想として語っているように見えて、意外に著者の思想に──そして、研究対象であるシューベルトの音楽に──横溢する多幸感を鋭く言いあてているようにも思います。美学研究者である小島さんならではの視点からの書評、とてもうれしく読みました。