第11回河合隼雄物語賞・学芸賞|記者会見の模様が公開されました

先週金曜日(2023年7月14日)にホテルオークラ京都にて授賞式が開催された「第11回河合隼雄物語賞・学芸賞」。ありし日の河合隼雄さんを思い出させるような、盛大ななかにもやわらかく心あたたまる雰囲気のただよう素晴らしい会でした。式の模様については、あらためてご報告したいと思いますが、6月6日の選考会の直後におこなわれた記者会見の模様が、ウェブマガジン「考える人」にて公開されました。

第11回河合隼雄物語賞・学芸賞授賞作決定|考える人
https://kangaeruhito.jp/article/756624

選考委員の小川洋子さんは、「物語賞でノンフィクションが選ばれるのは初めてのこと」として、

もともと吉原さんはバーンスタインについてのノンフィクションを書くつもりではなく、学者として論文を書く目的で、ワシントンの議会図書館で資料を調べているときに偶然、バーンスタインのコレクションの中に、無名の日本人の名前を2人見つける。しかもかなりな量の手紙が残っている。そのことから出発してこの本が生まれています。もうそのこと自体が、ひとつの偶然から巻き起こった物語のようなスタートだったと思われます。

[橋本邦彦さんの手紙について]私は小説や映画以外で、これほどまでに美しい本物のラブレターを読んだことがないなという驚きを覚えました。

[バーンスタイン、天野和子さん、橋本邦彦さんという]3人の人間が交差していく、まさに人生とは物語だな。自分の思いもよらないことが起こって、振り返ってみると、ああ、でも自分が行くべき道を通ってきたな。というふうに思わせてくれる。そういうノンフィクションで、物語賞としてふさわしいと思いました。

と、本書が物語賞を受賞するにいたった背景を語りました。

続いておこなわれた質疑応答では、河合隼雄財団評議員の河合成雄さん(河合隼雄さんの三男)から、

本書は、学術書として英語で最初出版されたのですが、日本語版を作るときにバーンスタインに宛てた恋文を、橋本さんご自身が訳したり、著者の吉原さんと橋本さんとの間にも物語が生じたりするなど、どんどん多層的に物語が展開していく感じがあります。

という補足もありました。

学術研究として始まった本書が一篇の物語として多くの読者に届き、結果としてこのような賞をいただけたことに、不思議なめぐり合わせを感じるとともに、あらためて本書を出版できたことのしあわせを嚙みしめています。