美学会の学会誌『美学』2022年冬号に原塁著『武満徹のピアノ音楽』の書評が掲載されました。評者は音楽学者で九州大学准教授の西田紘子さん。
「豊饒な先行研究、すなわち武満研究それ自体が歴史を刻んでいることは、本書の丹念な注釈から知ることができる」としながら、
実際、武満の音楽を形容する際によく用いられる「一音」や「沈黙」といった概念をとってみても、本書の補論二を読んで自らの理解が皮相的であったことに気づかされる読者も少なくないだろう。
あるいは、
[…]武満の実践・思考を通して日本の文化・社会を歴史化する文化論としても、本書は機能する。
と本書刊行の意義を指摘したうえで、たいへんていねいに内容を紹介してくださっています。
結びでは、
いずれの章もこれまでの認識を更新する知見に満ちており、作品を分析し、解釈するとはどういう営みかについて、武満研究を超えて一つの方法モデルを提示している。演奏家にとっては演奏解釈の基盤を得られるだけでなく、自身の役割や作曲家や楽譜との関係を再考する絶好の機会となるだろう。本書を土壌にして、作品と言葉、それらをとりまくコンテクストを「再−構成」するという立場の研究がより活性化するとともに、対象の解体的あるいは文化批評的な読みへの広がりも期待される。
とたいへん高く評価してくださいました。