北日本新聞に『武満徹のピアノ音楽』の書評掲載

5月14日(土)付の北日本新聞に原塁著『武満徹のピアノ音楽』の書評が掲載されました。評者は音楽学者で武満徹研究の第一人者、小野光子さん。

【6/3追記】通信社の配信書評だったようで、5月8日付デーリー東北ほか各地の地方紙に同じ書評が掲載されたようです。

著者はピアノが「合理主義的な在り方を端的に要約」した楽器とし、主にピアノ曲を分析の対象とした。これはユニークな視点でワクワクさせる。[略]音を合理的に扱うことに批判的で邦楽器に関心を抱いた武満がなぜ、合理性を体現したピアノのための創作を続けたのか、というわけだ。

[…]テクストの分析は戦後日本の美術や文学にも及び、アバンギャルド、シュールレアリスムそして大江健三郎に至るまでを考察する。美術や文学に関心のある読者にも一読をお勧めしたい。

と高く評価したうえで、

ピアノは誰でも音が出せる。が、熟練者にしか出せない音もある。打鍵の仕方によって音質も音色も余韻も変わるからだ。かつ、武満はペダルを多用する。70年代以降の作品にも著者が指摘した「物理的な仕掛けとしての楽譜」という概念は有効なのではないか。そこが当代きっての名ピアニストたちに愛され続けている、武満作品の魅力だと思うのだが。

と今後の研究課題についても示唆してくださっています。