朝日新聞にラドゥ・ルプー追悼記事

5月1日(日)付の朝日新聞に4月17日に亡くなったピアニスト、ラドゥ・ルプーさんの追悼記事が掲載されました。

唯一無二、演奏家も惚れた ピアニスト、ラドゥ・ルプーさんを悼む|朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/DA3S15282501.html
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音楽評論家の伊東信宏さんが寄稿。モルドヴァやウクライナに近いルーマニアの東端の街でユダヤ系の両親のもとに生まれたという出自そのものを、「現代における奇跡のような人」と表現。「現代のスターシステムというようなものと、根源的に相容れないピアニスト」と指摘し、「むろん音そのものも美しかったが、彼の演奏の特質は、表層的な美音に溺れぬ豊かな立体性にあったように思う」と評しています。

伊東さんは「同業者たち、それもとびきり実力のある演奏家たちに惚れ込まれたという点でも、彼は唯一無二だった」と締めくくっておられますが、ルプーに惚れ込んだ演奏家の代表として、ピアニストの小菅優さんがインタビューに答えています(聞き手は同紙編集委員・吉田純子さん)。「気がついたら楽屋に押しかけていました。シューベルトの孤独や純真さが、そのまま何の邪心もなく音になっていた」と回想。

すごいと思う芸術家はいるけれど、音楽をやっていてよかったと勇気づけてくれる芸術家はそうはいません。「演奏する」のではなく、音楽が、ただそれそのものとして語りかけている言葉を音にする、神様のような人でした。

この小菅さんのコメントはそのまま、『ラドゥ・ルプーは語らない。──沈黙のピアニストをたどる20の素描』(板垣千佳子編)に掲載された20人に共通する思いでもあるでしょう。