日本音楽芸術マネジメント学会の学会誌『音楽芸術マネジメント』に森岡めぐみ編著『礒山雅随想集 神の降り立つ楽堂にて』の書評が掲載されました。評者は音楽学者で東京経済大学客員教授の久保田慶一さん。
「音楽芸術マネジメント学会の機関誌に掲載される書評として、礒山氏の追悼の書としてではなく、学術書として読んでみることが必要」と前置きして、第2部の礒山氏のエッセイ集ではなく、氏のいずみホールとの30余年にわたる協働についての森岡めぐみさんと住友生命いずみホールによる2編を収めた第1部に焦点をあてて論じた書評となっています。とくに礒山氏のいずみホール音楽ディレクターとしての仕事を、「ドラマトゥルク」という、おもにドイツの劇場で発展し、日本ではあまり知られていなかった職種としてとらえなおした森岡さんの着眼について高く評価していただきました。
最後には「[礒山]氏が言葉の力に信頼を置きすぎていなかったか」という指摘も。「音楽を言語的に理解しようとする美学が、氏の音楽観にしっかりと位置づいていたのであろう。[略]絵画を鑑賞するときに、題名や解説を見てから絵画に目を向けるのか、それとも作者名も題名も見ずに、まず絵画に目を向けるのか。どちらがいい、悪いの問題ではないだろう」という、『教養としてのバッハ』(弊社刊)をはじめ、礒山氏と親しく仕事をした経験ももつ久保田さんならではの、「礒山さんが生きていたらこんな議論をしたかった」という思いあふれる「苦言」に編集担当として胸が熱くなりました。