音楽評論家でスペイン文化研究家の濱田滋郎さんが3月21日(日)未明に急逝されました。享年86。
スペインやラテン・アメリカの音楽や文学の研究において長年第一線で活躍され、『フラメンコの歴史』『エル・フォルクローレ』(以上晶文社)、『スペイン音楽のたのしみ』(音楽之友社)などの著書や膨大な雑誌寄稿、レコード解説などで、唯一無二の存在としてファンから熱烈な支持を受けました。
昨年(2020年)4月に小社より刊行した濱田さんのひさしぶりの著書『約束の地、アンダルシア──スペインの歴史・風土・芸術を旅する』(写真:高瀬友孝)は、スペイン文化をもっとも色濃くたたえ、東西の文明の交錯する「秘法の地」、アンダルシアの魅力をかつてないスケールで描いたものでした。また12月に刊行した『荘村清志 弾いて飲んで酔いしれて』に寄稿していただいた「荘村清志と日本のギターの歩み」は、荘村清志というギタリストの芸術とわが国のギター音楽史を合わせ語った、濱田さんならではの骨太な一文でした。
次はアルベニス、セヴラック、モンポウについての著書を出そうと相談していたところだけに、突然の逝去の報に接し、信じられない思いが先に立ち、正直まったく実感がわきません。
いまはせめて、あのやわらかな笑顔を思い浮かべながら、濱田さんのご冥福をお祈りしたいと思います。
[木村]