美しい回想録。──『Jupiter』に『雨の歌』の書評掲載

大阪・いずみホールの情報誌『Jupiter』4・5月号に、菅野美智子著『雨の歌──ゲルハルト・ボッセ、その肖像のための十八のデッサン』の書評が掲載されました。書いてくださったのは同館の森岡めぐみさん。

美しい回想録。選び抜かれたことばが、時の流れを自在に行き来しながらグラデーションをいくつも織りなす。

この書では、家族であり通訳であった著者の記録、記憶されたことばが実に鮮やかだ。作品と深く向き合い、その真価を聴衆と分かち合うことをもっとも大切にした謙虚な音楽家の姿が刻印されている。最愛の書き手により、その音楽はここに留まった。

森岡さんが本書を読みながら思い出していたというエーリッヒ・フロムのことば──「愛の行為において人間を客観的に知るときにのみ、彼をその究極の本質において知ることができるのである」──は、本書と著者への最高の賛辞ですね。ありがとうございました。