ルネ・マルタンさんが『ナチュール 自然と音楽』日本語版にメッセージを寄せてくれました

写真:(c)大杉隼平

「ラ・フォル・ジュルネ2016」のオフィシャルブックである『ナチュール 自然と音楽』。このたび、同音楽祭アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンさんから日本語版の読者へのメッセージが届きました。その全文を公開します!

日本語版に寄せて

 自然はいつのときも、作曲家たち霊感の源泉であり続けてきました。2016年の「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭のテーマを「自然(ナチュール)」にしようと決めたのは、今から3年前のことです。
 鳥のさえずり、波のリズム、葉叢をわたる風、雷のとどろき。太古の人々は、みずからを取り巻くはてしない音の世界に心惹かれたはずです。そう、最初に音楽を奏でたのは自然でした! 自然の中に遍在する美は、やがて音楽化され、多くの作曲家たちによって描写されるにいたりました。さまざまな風景や光、色彩、そして詩情あふれる四季……私たちの耳をつねに虜にする自然の魅力が、声楽や器楽によってあまねく表現されるようになったのです。
 音楽祭のテーマを具体化するにあたって、私はまずカテゴリーとして「四季」「四大元素(風・水・火・土)」「風景」「動物」を想定し、自然にちなんだ多くの楽曲を集めました。その数は約1600曲にのぼります。これを約900曲にしぼり、それぞれのコンサートのプログラムとしました。
 そこで友人の音楽学者エマニュエル・レベル氏には、「自然と音楽」を切り口に公式本を書き、この「自然」というあまりに豊かなテーマを解き明かしてほしいと依頼しました。驚くべきことに、これまでフランスには、自然と音楽の関係について論じた本は存在しませんでした。絵画や文学にも精通しているレベル氏は、傑出した若き研究者です。氏には以前にも「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭のために本を執筆してもらったことがありますし、私が企画する講演会やレクチャー・コンサートでも、しばしばご登壇いただいています。
 純粋な音楽研究書としても価値の高い本書には、2016年の「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭で演奏される数々の楽曲への理解を深めるための「鍵」が、ふんだんに詰まっています。武満徹や細川俊夫をはじめ、多くの日本の作曲家たちもまた、自然に触発されて創作していることを、最後に強調しておきたいと思います。
 偉大な音楽家たちに霊感を与えてきた自然──この自然を護ることの大切さが、読者の方々に伝わることを願って。

 2016年3月

「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭 アーティスティック・ディレクター
ルネ・マルタン

『ナチュール 自然と音楽』は4月28日、「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭の開幕と同時に発売となります。楽しみにお待ちください!