【公開】ここが知りたい!『新しい和声』7つのポイント(Q&A)

4月に刊行した林達也著『新しい和声』は、東京藝大および同附属音高にて和声の教科書として採用されたことが新聞で報じられるなど、高い関心を集めています。アルテスでは、みなさんのさまざまな疑問にお答えするため、今週土曜日(6/27)から3カ月連続で説明会を開催しますが、それに先立って、「よくある質問」を公開しました。『新しい和声』の詳細情報ページに掲載しましたが、下記にも同じものを転載します。

ここが知りたい!『新しい和声』7つのポイント
監修:小鍛冶邦隆(作曲家、東京藝術大学音楽学部作曲科教授)

Q1 『新しい和声』はいままでの和声教本とどう違うのですか?
 現在、日本でよく使われている和声教本には、島岡譲先生が執筆責任者をつとめた『和声──理論と実習』(全3巻+別巻)や『総合和声』(以上、音楽之友社)などがあります(以下「島岡和声」と総称)。もっとも大きな違いは、「島岡和声」に特徴的な「和声記号」をもちいず、西洋で伝統的に使われている「和音数字」をもちいた教程であるという点です。

Q2 和声記号と和音数字はどう違うのですか?
 「記号」はあくまでも原則的な和声進行を説明するもの、「数字」はさまざまな和音進行をどのように記譜するかという、たいへん重要な原理です。記号は和声進行の「結果」を表し、数字は和音がどのように進行しうるかの「可能性」を表す、といえばわかりやすいかもしれません。現在進行形の音楽の姿を生き生きと描きだすには、言うまでもなく「数字」がすぐれています。

Q3 海外留学を考えています。『新しい和声』で勉強した内容は海外でも通用しますか?
 はい、ご安心ください。『新しい和声』で採用した和音数字は、海外でも標準的に使用されています。これまでは日本独特の和声記号が新奇な目で見られ、留学先で和音数字を一から学びなおす必要がありましたが、その心配はありません。

Q4 古楽を勉強していますが、バロック音楽で用いられている「通奏低音」との関係を教えてください。
 バロック音楽の通奏低音を演奏するには数字付き低音の理解が欠かせませんね。『新しい和声』で用いられている数字はフランス式ですが、ドイツ式の「数字付き通奏低音」の理解にも問題はありません。

Q5 独学で和声を勉強しています。『新しい和声』を使って独習することは可能ですか?
 推奨される和声進行を和声記号を使って学ぶことができ、ある意味「頭でおぼえる」ことのできる「島岡和声」にくらべて、『新しい和声』は決まった「答え」を教えてくれるわけではなく、その点では独習に適した教本とはいえないかもしれません。ただ、すぐれた作曲家でありピアニストでもある著者・林達也氏による質の高い実施範例をピアノで弾いているうちに、「美しい響きとは何か」が自然に身に付き、副題にある「理論と聴感覚の統合」をまさに実体験していただけるはずです。

Q6 東京藝術大学は半世紀ぶりに和声教本を刷新したそうですが、どのような意図があったのですか?
 東京藝大が従来採用していた「島岡和声」は、戦後の日本式メソードの流れをくむ、集団教育としての効率を第一に考えた教本でしたが、日本からも世界的音楽家が次々に輩出する時代となり、個人の音楽的資質を重要視する和声教育が必要とされるようになりました。『新しい和声』の採用は、そうした要請に応えたものであり、時代の必然なのです。

Q7 和声を学ぶとはそもそもどういうことですか?
 よい和声進行とは決まったものだと思いますか? ソルフェージュの基礎を身につけ、さらに楽器の演奏実技の延長上に「和声」を学ぶのが、ヨーロッパでの伝統的な音楽学習法です。「良い和声進行」とは理論ではなく、こうした総合的な音楽教育から、自然に「音楽性」として感得されるようになるものなのです。もちろん、良い学習法というものは、良い指導者がいてこそのもの。『新しい和声』は、学生のみならず、これからの指導者にとっての、「新しい指導法」にもかかわる重要な教科書といえるでしょう。

説明会へのお申し込みもひきつづき受け付けています。6/27(土)は残席わずかですのでお申し込みをお考えの方はお急ぎください(7/11(土)、8/22(土)はまだ席に余裕があります)。お申し込みは下記のリンクからどうぞ。

『新しい和声』の無料説明会を開催します

[木村]