遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、NHK教育テレビでも放映された毎年恒例の「ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート」はごらんになりましたか? 11月に刊行した『バレンボイム音楽論』の著者、ダニエル・バレンボイムが初登場ということで、2009年のアルテスは元旦から大盛り上がり。どんなに軽い曲でも剛球勝負、マエストロの真骨頂といったウィンナ・ワルツを堪能しました。
おりしも年末からイスラエル軍がガザ地区を空爆(その後、地上軍が侵攻)とのニュースが流れ、中東問題に積極的に関与してきたマエストロの発言が注目されましたが、毎年おきまりの《美しき青きドナウ》のイントロを中断しての挨拶のなかで、「中東に人間の正義がもたらされんことを」と簡潔にふれただけでした。ただ、そのひとことにこめられた万感の思いを感じとったであろう聴衆からは、敬意に満ちた拍手が送られ、行動する音楽家バレンボイムの信念が、その音楽をつうじて確実に浸透していることを感じさせました。
現実のリアリティを前に、ともすれば色褪せてしまいそうな「音楽の力」というものを、いまいちど実感することができたような気がしています。
[木村]