東書WEBショップ「音楽専門館」で好評連載中の安田寛さん「音痴と日本人」、第11回が公開されました。
WEB連載「音痴と日本人」
第11回 メーソンが日本人の音痴矯正に使った手段とは?
第10回にひきつづき、『小学唱歌集』初編の選曲と曲順が、伊澤修二ほかの留学生が「音痴」を克服した過程を記録したものなのではないかという謎にせまります。
『小学唱歌集』初編のもとになった『日本語音楽掛図』の選曲と曲順をみると、目賀田や伊澤がどんな課題を練習し、どんな歌を最初に歌ったのか、その過程がみてとれる。その証拠のひとつとなるのが、『小学唱歌集』初編第15番「春のやよい」である。この曲は、メーソンの『音楽掛図』の第1集から第3集までには出てこない。『音楽読本』第4集になってようやく、しかも4部合唱として出てくる曲である。原曲は子どもの賛美歌「幸せの国(There is a happy land)」である。そんな曲が、日本の『小学唱歌集』初編では早くも15番めに出てくるのである。この異常さは、まさにこの歌によって目賀田と伊澤が音痴を克服したからだ、という以外に説明のしようがない。
[木村]