インターン実習日誌-3(東京学芸大Nさん)

8/20(金)に実習を終えた東京学芸大のNさんから実習日誌が届きました。なかなか届かないなあと思っていたら、実習のあと、体調を崩していたとのこと。毎日暑かったし、けっこう忙しくさせちゃいましたから、きっと疲れたんでしょうね。「インターン生もこき使うアルテス」というイメージが定着しないか心配(笑)。Nさん、お疲れさまでした!

[木村]

8/16  4日目
今日の午前中は著者の方が書いた生の原稿をコピーしました。そのあとは、大学へ送るDMの作成の続きをしました。ワードやエクセルは大学でのレポートなどで使うだけなので、大学のリストをつくることだけなのに予想以上に時間がかかってしまいました。
午後は、制作中の本の全体的なデザインについて、デザイナーさんとの打ち合わせに同行させていただきました。表紙のデザインはもちろん、帯の長さや紙のことなどいろいろなことについて話し合いました。普段それほど、帯や紙質などに気をとめたことはありませんでしたが、もう少し柔らかい紙を使ったり、あるいは帯を長めにしてみたり、小さな工夫を加えることで、手に取った時の印象が大きく変わってくることに気付きました。また、そのように細部にこだわったつくりは、日本の出版物の特徴であるということも教えていただきました。確かに輸
入物の本は、見返しなどが無く安価な紙でつくられるペーパーバックのようなものが多いと思いました。意外なところに繊細な日本らしさを感じました。
その後は、新刊の注文数などの確認のため松沢書店に行き、中を見学させていただきました。そこには数えきれないほどの出版物があり、ここから全国の書店や楽器店に運ばれていくという現場を実際に目にして、本当にたくさんの人の手がかかっているのだということを実感しました。
8/17  5日目
 午前中は引き続きDMの作業をしました。大学の入試案内表をみてリストを作成したのですが、今現在の大学の情報(学科名など)と違いがないか、各大学のホームページと照らし合わせて確認しました。一部の私立大学では、学部名が変わっていたり、募集を停止していたりということがありました。もちろん他の業界においても同様に言えることとは思いますが、特に出版業界は常に最新の情報を知っていなければいけない世界だと思いました。
 午後は、そのリストを封書に貼るラベル用に変換する作業をしました。マニュアル通りにやったつもりでもなかなかうまくいかず、とても苦戦しました。
8/18  6日目
 今日は午後からの予定でした。昨日作成したラベル用のものを印刷し、注文票やあいさつ文を封筒の中に入れるなどのDMの最終の作業を行いました。もちろんたくさん補助してもらいながらでしたが主に自分が担当した仕事だったので、一通り作業が終わったときは達成感を得ました。
 この日は、ある冊子の編集会議にも出席させていただきました。依頼された仕事の場合、依頼主から指定を受けている『ページ数』というものがあります。そのため、この特集は1ページ削って、ここの部分をもうちょっとボリュームのあるものにしたほうがいい、あるいはもうひとつ企画を増やして調整するか、などの話し合いもされていました。これは、あまりページ数に細かい指定のない単行本などの時には問題にならないような部分だと思いました。出版物によっては、それぞれに異なった部分に注意を払わなければならないというのは新たな発見でした。
8/19  7日目
 今日は午前、午後を通して今度出版する本の原案を見せていただいて、それについて自分なりの意見を書き込んでいきました。もともとある音楽関連のテレビ番組の台本だったもののコピーそのものなので、文だけでなくイラストもたくさん載っているものでした。音楽の関する書物を作る場合、音楽というものは『音』という聴覚の情報であり、それを『文字』という視覚の情報にいかにうまく変換するか、というのが一番重要な点であると思います。それもできるだけわかりやすく、その音楽のもつ雰囲気や世界観を損なうことなく伝えるということは、著者や編集者の大きな役割であり、とてもやりがいがあり、面白い部分であるように思います。そういう意味では、音楽に関する書物の編集の作業というのは、普通の小説や雑誌の編集とはまたすこし違ったスキルも問われるのではないかと思いました。
 この日は、新刊のタイトルについてみなさんで話し合っていたのですが、タイトルの重要性というものにも気付かされました。このタイトルもほうがやわらかいイメージになる、この言葉が入っていると敷居が高く感じるのではないか、副題も少し変えてみようか、などの議論が行われていました。狙う年齢層や職業などによっても違ってくるし、いくら内容がすばらしいものでもタイトルが興味を引き付けるようなものでなければ、実際手に取ってくれる人の数もかなり変わってくるだろうということも改めて気付きました。
8/20 8日目
 午前中は、新刊の原稿の文字化けやスペルミスなどのチェックをしました。
 午後は、他社へ連れていっていただき、出版業界の現状や音楽系の出版物・楽譜に関することなど、いろいろなお話を聞きました。出版という分野で特徴的なのは著作権というものが関わってくるということ、そしてその管理に関すること、また、携帯電話やインターネットの普及で、ここ数年で出版業界とくに雑誌などがかなり変化してきたことなど、たくさんの興味深いお話を伺うことができました。
 その後は、あるラジオ番組の収録の立ちあいに同行させていただきました。ラジオは普段からよく聴くので、収録するスタジオの中の様子や、編集の作業などを実際に見ることができて、とてもおもしろかったです。ラジオのパーソナリティをされている作家の先生や、ラジオの編集のされているプロデューサーの方とも直接お話しさせて頂いて、とても貴重な経験でした。
 今回、このインターンシップでまず一番深く印象に残ったことは、1冊の本の重みです。著者の方が原稿を書く、編集者との打ち合わせを重ね訂正を繰り返し行う、タイトルを決める、帯や表紙などのデザインをする、印刷する、そこで1冊の本ができる。そしてそれが卸業者に運ばれる、そこから各書店に配布される、そしてやっと自分の手に届く。想像を超えた本当にたくさんの人が1冊の本に関わっていて、そのシステムがすべてうまく機能していて、ようやく1冊の本ができあがるのだということを、改めて実感しました。日常的に何気なく目にしている本の?裏の面?を実際に見ることができて、新しい発見がいくつもありました。実習中に頼まれた事務的な作業も、どこかの過程で誰かが必ずしなければいけない作業であり、どんなに少なくても、どのような形でも、その1冊の本をつくるということに携わることができたことを本当にうれしく思います。
 また、前回も書きましたが、人間同士の繋がりがとても深くかかわってくる仕事であるという印象を強く受けました。おそらく、いくら文章の編集の能力に長けている編集者でも、著者の方と良い関係を築くことができなければ、きっと本当にすばらしい本は作り出せないと思います。実際にみなさんのお話を聞いたり、著者の方との電話の受け応えを聞いたりする中で、そのようなことを感じました。
 今回は、非常に貴重な経験をたくさんさせて頂きました。正直私は現時点では、出版系の会社に就職するというように明確に決めているわけではありません。しかし、今回のインターンシップでは単なる知識としてだけではなく、実際に現場で体験して自ら発見し学んだものがたくさんありました。今回の実習で学んだことを最大限に生かして、今後就職活動に役立てたいと思います。短い間でしたが、本当にありがとうございました。