湯浅譲二の音楽

定価:本体3800円[税別]送料:国内無料

  • A5判・上製(仮フランス装) | 336頁
  • 発売日 : 2019年9月14日
  • ISBN 978-4-86559-210-8 C1073
  • ジャンル : 現代音楽/作曲家
  • ブックデザイン:寺井恵司/装画:湯浅龍平『DCM 2013-2』(2013)

未踏の地をめざす現代性と、
古典への遙かなまなざしと。
日本作曲界最後の巨匠の活動を一望する。

デビュー作《2つのパストラール》(1952)、
実験工房での武満徹らとの活動、
禅とサルトルへの傾倒、
さまざまな「プロジェクション(投企)」、
電子音楽への取り組み、
芭蕉、世阿彌ら日本の伝統的な美学への憧憬、
そして21世紀の作品群へ──

西洋音楽を基盤につねに未聴の前衛性をめざしながら、
日本古来の美意識につらなる者としての自覚を作品に刻みつづけてきた
日本作曲界最後の巨匠、湯浅譲二。

本書は、1980年代からその活動に着目し、作曲家本人と親しく交流しながら、
研究を続けてきたイタリア人音楽学者によって書かれ、
緻密で徹底的な分析と、作曲家への敬愛にもとづくあたたかなまなざしが同居した、
唯一無二の伝記的研究書となっている。

日本版では、湯浅の幼少時から近年にいたる活動や交流を示す写真や、
そのユニークな作曲過程を示す自筆のグラフなどの写真を独自に掲載。
訳者による詳細な年譜と作品目録も付した。

湯浅譲二90歳記念出版!

プロフィール

  • ルチアナ・ガリアーノ(Luciana Galliano)
    音楽学者、音楽美学者。1979年にトリノ国立大学、1991年に東京藝術大学で音楽学の修士号を取得。音楽理論と民族音楽学の知識をもとに、日本の現代音楽の考察を試みる。その後、ヴェネツィア大学で長年教鞭をとった。2009年、細川俊夫と日本の現代音楽を特集したMiTo(Milan andTurin)音楽祭に協力。2013年、イタリアの教育省から民族音楽学、音楽学、アジア研究の准教授に任命される。主な編著に『蓮──細川俊夫の音楽』(2013)など。 主著に『洋楽』(1998)、近著に『日本のフルクサス』(2018)がある。

  • ピーター・バート(Peter Burt)
    ロンドンに生まれる。ヨーク大学、ゴールドスミス・カレッジ、ダラム大学で音楽を学ぶ。武満徹研究で博士論文を執筆。主著『武満徹の音楽』は、英語、イタリア語、日本語で出版されている。また、多くの大学で教鞭をとるほか、執筆多数。本書『湯浅譲二の音楽』の英語版出版においては、湯浅の「コスモロジー」ができるだけ理解しやすい英語で表記されるよう、著者と協力した。

  • 小野光子(おの・みつこ)
    国立音楽大学大学院音楽学研究科修士課程(音楽学)修了。主著『武満徹 ある作曲家の肖像』(音楽之友社)で第29回ミュージック・ペンクラブ音楽賞(研究・評論部門)を受賞。主な訳書にピーター・バート著『武満徹の音楽』(音楽之友社)、Takemitsu Asaka, Memoir of Tōru Takemitsu(共同英訳:一色智子+デイヴィッド・パクン、iUiverse)など。編集に『武満徹全集』(書籍5巻+CD58枚、小学館)、『柴田南雄とその時代』(Fontec)など。

CONTENTS

日本語版に寄せて

第一章 デビュー
1.1 初期の作品
1.2 知への目覚めと実験工房
1.3 (可不可)収斂Ⅰ──主体性探求における禅とサルトル
1.4 《七人の奏者のためのプロジェクションズ》
1.5 (可不可)収斂Ⅱ──禅とフランス音楽からの影響
1.6 《内触覚的宇宙》

第二章 “プロジェクト”の確立
2.1 個々のプロジェクト、社会、ジョン・ケージ
2.2 《相即相入》
2.3 そのほかの作品と伝統楽器を用いた創作
2.4 電子音楽

第三章 時間
3.1 日本的な時間概念
3.2 プロジェクションと時間
3.3 ヴェーベルンの時間と空間、そして間
3.4 《弦楽四重奏のためのプロジェクション》
3.5 一九七〇年代初期のその他の作品
3.6 《クロノプラスティク》
3.7 《オーケストラの時の時》

第四章 声と言語
4.1 言語──隠された音楽的特性
4.2 声楽的表現における“日本的なもの”
4.3 身振り
4.4 言語と自己表現
4.5 《ヴォイセス・カミング》
4.6 《問い》
4.7 《アタランス》
4.8 《つぶやき》

第五章 個と宇宙──芭蕉
5.1 日本の詩と芭蕉
5.2 松尾芭蕉Ⅰ──声楽作品
5.3 松尾芭蕉Ⅱ──一九七〇年代の室内楽作品
5.4 松尾芭蕉Ⅲ──室内楽作品

第六章 一九八〇年代のオーケストラ作品
6.1 《オーケストラのための透視図法》
6.2 《啓かれた時》

第七章 世阿彌元清
7.1 能、世阿彌と仏教
7.2 《「夜半日頭」に向いて──世阿彌頌》
7.3 世阿彌による「九位」に作曲
7.4 《世阿彌・九位》

第八章 道
8.1 変革に向けてⅠ──構造と内容
8.2 変革に向けてⅡ──相互関係の論理
8.3 始源というテーマ──《始源への眼差》
8.4 その他の作品
8.5 二一世紀の作品

訳者あとがき
年譜と作品目録
主要参考文献