シューベルトの「冬の旅」

シューベルトの「冬の旅」

定価:本体5,800円 [税別]

  • A5判変型・上製 | 440頁
  • 発売日 : 2017年2月8日
  • ISBN : 978-4-86559-150-7 C1073
  • ジャンル : クラシック/声楽/ドイツ文化
  • 装丁:桂川 潤/装画:カスパー・ダーフィト・フリードリヒ『冬』(1807-08。原画は焼失。残されたモノクロ写真に彩色)

当代一の名歌手が、楽聖の遺した暗号をいま解読する。

「ボストリッジは音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家である」
──アルフレート・ブレンデル(ピアニスト)

英国の誇る世界的リート歌手が、1000回を超える演奏経験と、文学・歴史・政治・自然科学におよぶ広大な知見と洞察にもとづいて著した、いまだかつてない刺激的なシューベルト論。

『冬の旅』全曲の成立史を克明に跡づけるとともに、詩人ミュラーと作曲家シューベルトが生きた19世紀初頭のヨーロッパの文化状況や自然環境を、豊かなイマジネーションで読者の眼前に生き生きと再現する。カラー図版を多数掲載した美しい造本仕様も魅力。

すぐれたノンフィクション作品にあたえられる英国の権威ある文学賞「ダフ・クーパー賞」を受賞!

『冬の旅』ほどに複雑で強い情感を呼び起こす作品を演奏するということは、それにあらゆる面でかかわるということだ。1828年に文化という大海原に流された、瓶に入れられたメッセージが、いまに生きる私たちにどんな意味をもつのかを理解することでもある。この作品は私たちの現在の関心事にどう関連するのだろうか? まったく予期しなかったようなかたちでも、私たちとのつながりが見つかるのだろうか?(本文より)

この著作の英語のサブタイトル[Anatomy of an Obsession]が示すように、『冬の旅』にとりつかれた心を分析することで、ボストリッジは自分が音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家に属することを証明してみせた。彼が語ることは、生き生きとして博識であり、もっとも素晴らしい意味において読者を楽しませるものである。本著は文化史を概観させてくれるばかりでなく、プレゼンテーションの大胆さと巧みさゆえに、読者をこのうえなく刺激的な知的世界への冒険へと誘うのだ。[略]
この本はより広い読者層を意識したものである。音楽用語の使用は控えてあり、さまざまな専門用語は説明がなされている。それに加えて、見識をもって選び抜いたかずかずの絵画や映像が、彼の文章をさらに豊かなものにしている。シューベルトとカスパー・ダーフィト・フリードリヒを対比させることが、これほどまでに意義深く思えることはめったにないだろう。(アルフレート・ブレンデル/独Zeit紙の書評より)

プロフィール

  • イアン・ボストリッジ(Ian Bostridge)
    イギリスのテノール歌手。ドイツ・リートの解釈では今日もっとも卓越した歌手のひとりとして、世界中で高い評価を受けている。オペラや歌曲の録音はかずかずの賞を獲得しており、ヨーロッパや北アメリカ、極東で定期的にリサイタルをおこない、批評家からも絶賛されている。
    オックスフォード大学では近代史を専攻し、1990年博士号を取得。著書に『1650年から1750年における魔術とその変容』(1997)と『歌手の忘備録』(2011)がある。オックスフォード大学の音楽学客員教授をつとめ、英国の新聞『ガーディアン』や英語圏を代表する書評週刊誌『タイムズ文芸付録』に定期的に寄稿している。

  • 岡本時子(おかもと・ときこ)
    上智大学大学院外国語学研究科言語学博士後期課程単位取得退学。ドイツ、ザールラント大学留学。専門はドイツ言語学、音声学。現在筑波大学グローバルコミュニケーション教育センター非常勤講師。主要著書:『ドイツ言語学辞典』(共著、紀伊國屋書店)

  • 岡本順治(おかもと・じゅんじ)
    上智大学大学院外国語学研究科言語学博士後期課程単位取得退学。ドイツ、ザールラント大学留学。専門はドイツ言語学、認知意味論。現在学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科教授。主要著書:『現代ドイツ言語学入門』(共著、大修館書店)、『講座ドイツ言語学 ドイツ語の文法論』(共編著、ひつじ書房)

CONTENTS

日本語版への序文

序 章
第1章 おやすみ Gute Nacht
第2章 風 見 Die Wetterfahne
第3章 凍った涙 Gefrorne Tränen
第4章 凍 結 Erstarrung
第5章 菩提樹 Der Lindenbaum
第6章 あふれ流れる水 Wasserflut
第7章 流れの上で Auf dem Flusse
第8章 かえりみ Rückblick
第9章 鬼 火 Irrlicht
第10章 休 息 Rast
第11章 春の夢 Frühlingstraum
第12章 孤 独 Einsamkeit
第13章 郵便馬車 Die Post
第14章 霜雪の頭 Der greise Kopf
第15章 カラス Die Krähe
第16章 最後の希み Letzte Hoffnung
第17章 村 で Im Dorfe
第18章 嵐の朝 Der stürmische Morgen
第19章 惑わし Täuschung
第20章 道しるべ Der Wegweiser
第21章 宿 屋 Das Wirtshaus
第22章 勇 気 Mut
第23章 幻の太陽 Die Nebensonnen
第24章 ライアーまわし Der Leiermann
終 章 なごり

訳者あとがき
訳 注
参考文献
図像についてのクレジット