「スケールの大きさに、思わず息をのみ、引き込まれずにはいられない。
勇気あふれる斬新なR.シュトラウス研究の登場である」
──飯守泰次郎(指揮者)
世界大戦前夜、ナチスが台頭するドイツで、
ユダヤ系作家との共作にこだわった男がいた──。
権力を握った作曲家の新しい側面を見る!
R.シュトラウスには、音楽的にも、政治的にも、複雑な矛盾と秘密が潜んでいる。
本書は《無口な女》という作品ただひとつから出発して、作曲家の創造の核心に奥深く分け入る。著者は、驚くばかりに多くの信頼できる事実や資料を徹底的に分析し、さらに想像力を豊かにはたらかせて、R.シュトラウスという一人の人間の精神とその背景を生き生きと描く。また、具体的なオーケストレーション、ライトモティーフや調性のアナリーゼにも、非常に深い洞察力を感じる。音楽と政治、文化と社会という時代背景をも包含するスケールの大きさに、思わず息をのみ、引き込まれずにはいられない。
勇気あふれる斬新なR.シュトラウス研究の登場である。
──飯守泰次郎(指揮者)
プロフィール
広瀬大介(ひろせ・だいすけ)
1973年生。東京都板橋区出身。1998年、国際基督教大学大学院比較文化研究科・博士前期課程修了。2006年、一橋大学大学院言語社会研究科・博士後期課程修了。博士(学術)。2002‐04年ドイツ・ミュンヘン大学に研究留学。専攻は20世紀前半のドイツ音楽史で、特にリヒャルト・シュトラウスの音楽とその社会的関わりを中心に研究活動を行っている。現在、慶應義塾大学、多摩美術大学非常勤講師。日本リヒャルト・シュトラウス協会運営委員。訳書にベルリオーズ/シュトラウス『管弦楽法』(音楽之友社)など。『レコード芸術』『グランド・オペラ』誌ほか、CDライナーノーツ、オペラDVD対訳、演奏会曲目解説などへの寄稿多数。
CONTENTS
第1章 自画像を奏でる作曲家
1 切り捨てられたシュトラウスの後半生
2 シュトラウス作品における「自画像」とは
第2章 新しいオペラへ
1 出会いの前
2 ホフマンスタールの死、新しい才能との出会い
3 原作『エピシーン、またはもの言わぬ女』との対比
4 幸せな共同作業──1932年、作曲の過程
5 ナチ政府による暗い影──1933年、作曲の過程
6 暗転──1934年、作曲の過程
第3章 ナチ政府とシュトラウス
1 ナチ政府と「全国音楽局」
2 《無口な女》事件
3 冬の時代──1935年以降
4 《無口な女》の受難
第4章 《無口な女》の音楽
1 数少ない同時代の作品とその意味について
2 シュトラウスの作曲法・スケッチなど
3 音楽的手法──番号オペラとしての《無口な女》
4 ライトモティーフについて
5 声楽パートと合唱について
6 オーケストレーションについて
7 調性について
第5章 シュトラウスの「自画像」
1 他作品からの引用がもつ意味
2 音楽と言葉に秘められたメッセージ──この作品も「自画像」か