フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル。
「伝説」が「歴史」へと変容するとき、そこにはいつも彼女がいた──
演奏家が音楽史の形成に積極的役割を演ずる姿を描きだす!
フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルはいつから「近代フランス音楽の三大巨匠」とよばれるようになったのか──。
彼らの名声の背景にはひとりの女性ピアニストがいた。マルグリット・ロン(1874–1966)である。
ロン゠ティボー国際コンクールの創設者のひとりとしても名を残すロンは、三大巨匠の伝承の語り部を任じ、「作曲家への忠実」をモットーに、著書・講演・演奏活動をとおして、彼らの音楽が「フランス音楽の正典(カノン)」としての地位を確立することに貢献した。
演奏家が音楽史の形成に果たす積極的役割をあざやかに剔出した画期的研究!
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プロフィール
神保夏子(じんぼう・なつこ)
京都府出身。東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学研究分野博士後期課程修了。博士(音楽学)。学内にて大学院アカンサス音楽賞受賞。日本学術振興会特別研究員PDを経て、現在立教大学、国立音楽大学、桐朋学園大学、東海大学非常勤講師。共訳書にカンタン・メイヤスー『亡霊のジレンマ——思弁的唯物論の展開』(青土社、2018)。専門分野は近代フランス音楽史、演奏文化史。2021年より朝日新聞の演奏会評を担当。日本音楽学会、国際音楽学会会員。
CONTENTS
はしがき(読者の皆さまへ)
序
本書の目的と研究対象/先行研究と資料・研究方法/本書の構成
第一部 カノンとしての〈フォーレ・ドビュッシー・ラヴェル〉
第一章 近代フランス音楽と「三大巨匠」
1.黄金期としての「近代」
2.三位一体のカノン
第二章 マルグリット・ロンと「三大巨匠」
1.「選ばれた」演奏家
2.『……とピアノのもとで』
3.疑惑
第二部 演奏家と作曲家
第三章 フォーレ「以前」
1.マルグリット・ロンと「良い指」
2.「現代」音楽との出会い
第四章 ガブリエル・フォーレとともに
1.発端
2.パリ音楽院にて ①斡旋と就職
3.「フォーレのピアニスト」として
4.パリ音楽院にて ②破局と妨害
第五章 クロード・ドビュッシーとともに
1.短くて「長い」勉強
2.「フォーレのピアニスト」から「ドビュッシーのピアニスト」へ
3.二人の未亡人
4.《ピアノと管弦楽のための幻想曲》
第六章 モーリス・ラヴェルとともに
1.《協奏曲》以前
2.ヴィルトゥオーゾの夢──《ピアノ協奏曲ト長調》
3.外交と宣伝活動
4.「商品」としての自作自演
5.「私の」《協奏曲》
第三部 「三大巨匠」の成立
第七章 パリ音楽院ピアノ科におけるフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル
1.ピアノ予備科教員時代(一九〇六-一九一九)のロン
2.ピアノ高等科教授就任(一九二〇)
3.学内試験演奏曲目に見るフォーレ、ドビュッシー、ラヴェル
第八章 パリ音楽院外におけるロンの教育文化活動
1.エコール・ロンと公開演奏講座
2.エコール・ノルマル音楽院での演奏講座(一九二一)
3.「ヴィルトゥオジテと解釈の講座」(一九二五-一九三一)
4.フランス音楽大使マルグリット・ロン
5.「三大巨匠」表象の完成
6.「三大巨匠」の展示計画
7.回想の言説
8.「三大巨匠」とフランス的なるもの
第四部 伝統と忠実
第九章 「忠実さ」の論理
第一〇章 様式とテクニック
第一一章 「フォーレの伝統」
1.フォーレの息子による「伝統」批判
2.《即興曲第二番》の楽曲構成
3.「急がずに」
4.作曲者による抵抗?
5.演奏テンポの変化
6.「アレグレット」の美学
第一二章 「伝統」とマニエリスム
結び
あとがき
マルグリット・ロン関連文献ガイド
参考文献表
註
資料
索引