求むマエストロ。瓦礫(がれき)の国の少女より
イラク・ナショナル・ユース・オーケストラの冒険

定価:本体2500円[税別]送料:国内無料

  • 四六判・並製 | 424頁+カラー口絵16頁
  • 発売日 : 2019年5月30日
  • ISBN 978-4-86559-195-8 C1073
  • ジャンル : クラシック/オーケストラ/ノンフィクション
  • ブックデザイン:福田和雄(FUKUDA DESIGN)

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17歳のイラク人少女の呼びかけに応えたスコットランド人指揮者のポール。
彼を待っていたのは、楽器もなく技術もない、熱意だけは一人前の若者たちだった──
音楽の奇跡に心躍る感動のノンフィクション!

風変わりな冒険に放りこまれた
クルド人、アラブ人、アメリカ人、イギリス人が、
おずおずと最初の一歩を踏みだした。
誰もがおたがいをちょっと警戒し、でも少しだけ信頼していた──

本書の主人公はスコットランドの指揮者ポール・マカランダン。
2008年、バグダード在住の17歳のピアニスト、ズハル・スルタンが「マエストロ求む」と呼びかけた新聞記事に目を留めたことをきっかけに、イラク・ナショナル・ユース・オーケストラの音楽監督に就任する。
オーケストラの設立に尽力し、YouTubeでオーディションをおこない、ファンドレイジングにかかわり、イラク国内はもとよりヨーロッパ各地に招かれて演奏ツアーを敢行。
2014年にISIL(イスラム国)の台頭にともなう国情の悪化によって解散するまで、ともすれば不安定な政情や他国人の無理解、民族間の感情的軋轢などによって迷走しながらも、世界に向けて高らかに「音楽の力」を謳い上げたイラク・ナショナル・ユース・オーケストラとポールの7年間を克明に描き出す。

解説=樋口美治(中東音楽研究家)

プロフィール

  • ポール・マカランダン(Paul MacAlindin)
    スコットランドのアバディーンに生まれる。サリー大学、ヨーク大学、オープン大学で修士・博士課程を修了。
    スコットランド室内管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団にてピーター・マクスウェル・デイヴィスのアシスタントを務め、1993年からプロの音楽家として活動を始める。それ以来、ニュージーランド交響楽団、デュッセルドルフ交響楽団、スコットランド・ナショナル・ユース・オーケストラなど多くのオーケストラで指揮者や客演指揮者を務めた。
    イラク・ナショナル・ユース・オーケストラでは6年間にわたって音楽監督を務める。英語、ドイツ語ともに堪能。

  • 藤井留美(ふじい・るみ)
    翻訳家。訳書は『レッド・アトラス』(日経ナショナルジオグラフィック社)、『私はすでに死んでいる』(紀伊国屋書店)、『フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ』(音楽之友社)など多数。アマチュア室内オーケストラを20年以上にわたって共同運営した経験を持つ。

CONTENTS

序文(サー・ピーター・マクスウェル・デイヴィス)
はじめに

1 イラクの若者、マエストロを求む
2 五万ドルのつぶやき
3 スレイマニヤでキックオフ
4 一触即発
5 そして壁は崩れた
6 暗闇に住まわせておくれ
7 傷心のオーケストラ
8 ドイツへの扉が開く
9 友だちってそういうもの
10 ありえないミッション2011
11 ダモクレスの剣
12 イラクの外交使節
13 イギリス礼賛
14 エディンバラの端っこで
15 スコットランドとの和解
16 呼吸と死
17 パラドックス
18 渇き
19 活動の頂点
20 エクサンプロヴァンスの十字路
21 火星へのミッション
22 エルジンの解決策
23 イラクとの和解
24 熱意
25 イラク人とは

解説(樋口美治)