ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス

2,400円 [税別]

  • 四六判・並製 | 336頁
  • 発売日 : 2017年11月15日
  • ISBN 978-4-86559-171-2 C1073
  • ジャンル : クラシック/作曲家/伝記
  • 解説:オヤマダアツシ/ブックデザイン:桂川 潤

英国音楽史に屹立する孤高の作曲家フレデリック・ディーリアス。
病に苦しむ作曲家に寄り添い、その最晩年の名作をともに紡ぎ出した青年音楽家が、
みずみずしい筆致で綴った回想録の傑作、待望の完訳!

音楽と人生との関係について書かれた、
もっとも美しい書物。
──林田直樹
(音楽ジャーナリスト・評論家)

病に苦しむ作曲家ディーリアスを助け、その最晩年の傑作群をともに紡ぎ出した6年間。
自然に抱かれたフランスの小村での奇跡的なコラボレーションを、みずみずしい感性で綴る。

「もう二度とあのような人に出逢うことはないだろう」

青年音楽家フェンビーは、大作曲家ディーリアスが不治の病に苦しんでいることを知り、作曲の手伝いをしたいと手紙を送る。
仏グレー・シュル・ロワンへ旅立ったフェンビーが直面したのは、盲目と全身麻痺に冒された偏屈な老人との奇妙な共同生活であった──

彼はニワトコの樹の下で車椅子に座り、
私がまったく新しい開始部を書き留めるのを待ちかまえていた。(略)
「エリック、君かい?」
私が庭の小道をやってくるのを聞きつけて、彼はそう呼びかけた。
「新作の新たな開始部を書き留めてほしい。君の五線譜を持ってきて、私の隣に座っておくれ……」

本書は、英国音楽史に独特の存在感をもって屹立する作曲家フレデリック・ディーリアス(1862-1934)の最晩年を描いた回想録。
病に苦しむ老作曲家を助け、その「白鳥の歌」ともいうべき珠玉の作品群をともに紡ぎ出した音楽家エリック・フェンビー(1906-1997)が、作曲家没後の1936年に出版した回想録Delius as I Knew Himの全訳である。

あらゆる点で正反対な二人の音楽家の想像を絶する共同生活、奇跡的なコラボレーション、創造の歓び、そして宗教的な葛藤が、清新な感性で綴られ、一篇の文学作品といっていい回想録の傑作を生み出した。

1968年にはイギリスを代表する伝記映画の巨匠ケン・ラッセル(『恋人たちの曲/悲愴』『マーラー』)が、Song of Summerと題して映像化し、BBCが放送。日本でも1970年にNHKが放送し、わが国にも多数のディーリアン(ディーリアス愛好家)を生んだ。イギリスのシンガーソングライター、ケイト・ブッシュが、ラッセル監督の映画をもとに〈ディーリアス〉(1980)を発表したことによっても知られている。

今回、英国に在住し、「ディーリアスとゴーギャン」を研究テーマとして、英国音楽の普及に尽力する若きヴァイオリニスト小町碧が全訳を敢行。
イギリス音楽を専攻する音楽学者・向井大策が監修し、イギリス音楽を愛する音楽ライター・オヤマダアツシが解説を執筆するという万全の布陣により、待望の日本語版出版が実現した。

なお、本書の出版と小町碧による出版記念リサイタルを対象としたクラウドファンディングでは、160人もの賛同を得、100万円を超える出資が集まった。

英国の作曲家ディーリアスの晩年を描いた伝記の日本初の翻訳出版&ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を成功させたい!|MotionGallery
「真実のディーリアス ~小町碧 出版記念リサイタル~」|高嶋音楽事務所

出版、リサイタル、CDリリースなどに次々に広がるこの「ディーリアス・プロジェクト」を発案し、プロデュースしたのは音楽評論家の林田直樹である。

カバー装画:アーネスト・プロクター作『ディーリアス』

プロフィール

  • エリック・フェンビー(Eric Fenby, 1906–1997)
    作曲家。英国の作曲家フレデリック・ディーリアス(1862–1934)の筆記者として知られる。ディーリアスと同じヨークシャー州に生まれ、幼少期から絶対音感をはじめ音楽の才能をあらわす。12歳から18歳まで生地スカーバラの教会でオルガニストを務めるかたわら、作曲を独学。1928年、22歳のときにディーリアスの《春はじめてのカッコウを聞いて》を聴き、感銘を受ける。ディーリアスが盲目と全身麻痺に苦しみ、作曲ができないことを知り、手紙で手伝いを申し出る。仏グレー=シュル=ロワンのディーリアス邸での共同作業は6年間におよび、フェンビーはディーリアスの口述により、ヴァイオリン・ソナタ第3番をはじめ、管弦楽曲《夏の歌》、合唱と管弦楽のための《告別の歌》、独唱と管弦楽のための《牧歌》など、大規模な作品も含め、10曲ほどを完成させた。ディーリアス没後に出版した回想録Delius as I Knew Him(1936)は、作曲家の最晩年の姿を生き生きと描き出し、ケン・ラッセル監督によって映像化(BBCテレビ映画Song of Summer)され、またシンガー・ソングライター、ケイト・ブッシュもラッセル監督の映画をもとに〈Delius〉(1980)を発表するなど、世界中の多くの人々を魅了した。
    1939年にはアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『巌窟の野獣』の音楽を担当、その後も作曲家として活動を続けたが、ディーリアスの存在を乗り越えることはできず、作品のほとんどを破棄。その後は音楽教育者として活動した。ノース・ライディング教員養成校の音楽科を創立し、1962年にはディーリアス生誕100周年記念音楽祭での功績によりOBE(大英帝国勲章)を受勲。1964年から77年にかけて英国王立音楽院作曲科の教授を務めた。
    1968年にBBCで放送された映画Song of Summerの収録にあたっては、グレー=シュル=ロワンに戻り、ケン・ラッセル監督の顧問として制作を支えた。
    晩年は妻ロウィーナと故郷のスカーバラに定住して穏やかな生活を送った。1997年死去(享年90)。

  • 小町 碧(こまち・みどり)
    ロンドン在住のヴァイオリニスト。12歳でチューリヒ室内管弦楽団と共演してデビュー。以来、国際的な活動をおこなっている。英国王立音楽院の音楽学士・修士課程を首席で卒業。英国と日本を拠点に、両国の音楽を国際的に紹介していく活動は、NHK、BBC Radio 3など、さまざまなメディアに紹介されている。長年の研究テーマである「ディーリアスとゴーギャン」については、日本経済新聞に特集記事が掲載され、2013年には英国ディーリアス協会に表彰された。
    https://www.midorikomachi.com/

  • 向井大策(むかい・だいさく)
    沖縄県立芸術大学准教授。 愛媛県松山市出身。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業(アカンサス音楽賞)、同大学大学院音楽研究科修士課程を経て、博士後期課程修了。博士号(音楽学)。ベンジャミン・ブリテンを中心とした20世紀のオペラにかんする研究をおこなう。

CONTENTS

エリック・フェンビー略伝(クリストファー・パーマー)

ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス
  Ⅰ フレデリック・ディーリアスの人生における間奏曲
  Ⅱ 私たちはどのように作業したか
  Ⅲ 私が知ったディーリアスの人となり、作曲家としてのいくつかの側面
  Ⅳ 日 没

Appendix
  ディーリアスの作曲法
  一九八一年版へのあとがき
  ディーリアスとフェンビーの遺産

訳者あとがき ディーリアスとフェンビーが私に教えてくれたこと(小町碧)
解 説(オヤマダアツシ)
ディーリアス略年譜(沼辺信一)
索 引