私たちは音楽のヒューマニズムから自由になれるのだろうか?
音楽が多すぎる時代に、音楽を取り戻す。
「不自由」な音楽を問い直す自由でしなやかな感性による音楽論!
『音楽療法を考える』やマリー・シェーファーの翻訳などで知られる
臨床音楽学の第一人者が、高度資本主義、グローバル社会における
音楽のあり方を問いただし、持続可能(サステナブル)な音楽のあり方を
模索する切実な問題を投げかける意欲的な論考。
明るく楽しい音楽はどこから来たのか?
なぜウケのわるい難しい音楽が創り続けられてきたのか?
なぜクラシック音楽がえらくなったのか?
なぜ巷には聞きたくないのに音楽が溢れているのか?
どうして芸術家が構想する社会改革は失敗に終わるのか?
なぜみんな音楽から遠ざかりはじめたのか?
──みんな、不要となった音楽の掟にわれわれがしばられているからだ。
音楽によるヒューマニズムの押し売りに辟易しているあなたへ──
プロフィール
若尾 裕(わかお・ゆう)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。日本音楽即興学会世話人代表。専門領域は臨床音楽学や即興演奏。音楽療法も含め、現代音楽後の新しい音楽の創成が今の研究テーマ。著書に『奏でることの力』(春秋社)、『音楽療法を考える』(音楽之友社)など、CDにジョエル・レアンドルと共演した『千変万歌』(メゾスティクス)など。
CONTENTS
はじめに
第一章 反ヒューマニズム音楽論
1-1 深く音楽をする
1-2 クラシック音楽という生政治
1-3 近代西洋音楽と生政治
1-4 ノイズ、ブルース、生政治
1-5 楽しい音楽
1-6 感情労働としての音楽
1-7 パイプダウン
1-8 これ以上、音楽を作る必要があるのか?
第二章 クラシック音楽という不自由さ
2-1 コンヴェンショナル・ウィズダム
2-2 三和音の帝国
2-3 ジョージ・ロックバーグの弦楽四重奏曲
2-4 感動ビジネスとしての音楽
2-5 耳の歴史
第三章 現代音楽は音楽を解放したか
3-1 難しい音楽はなぜ作られるのか
3-2 20世紀芸術の本質は落書きである
3-3 モダニスト・ケージ
3-4 デレク・ベイリー追悼
3-5 作曲家 コーネリアス・カーデュー
3-6 音楽は感染する
3-7 物語から離れて漂流する音たち
第四章 アウトサイダー・ミュージック
4-1 ニューロティピカル音楽
4-2 エロイカ交響曲
4-3 アウトサイダー・ミュージック
4-4 へたくそ音楽の系譜
4-5 スタッフベンダビリリ
4-6 国境なき音楽家団
4-7 ノヴァーリスの音楽的問題
第五章 サステナブル・ミュージック
5-1 ダークサイド・オブ・ミュージック
5-2 エコ思想は芸術には不要か
5-3 カルチュラルデモクラシー
5-4 サステナブルミュージック持続可能な音楽
5-5 参加型音楽と上演型音楽
5-6 音楽の禁止
5-7 あなたと奏でたい
音楽家ディオゲネス─あとがきにかえて