〈クラシック〉と〈ポピュラー〉
公開演奏会と近代音楽文化の成立

定価:本体2200円[税別]送料:国内無料

  • 四六判・並製 | 328頁
  • 発売日 : 2014年4月22日
  • ISBN 978-4-903951-86-7 C1073
  • ジャンル : クラシック/音楽史クラシック/音楽史
  • 装丁:中島 浩

音楽はいつから〈教養〉と〈娯楽〉に分かれたのか──

18・19世紀のコンサート・プログラムや音楽批評をひもとき、
近代の音楽文化が〈クラシック〉と〈ポピュラー〉という対立軸によって再編されていく過程を活写する。

従来のパラダイムを一新する画期的な音楽社会史研究!

現代のわれわれが無意識に思い浮かべる「クラシック」対「ポピュラー」、「重い音楽」対「軽い音楽」という対立軸は、いつ生まれたのか。モーツァルトを聴くことはいつから教養とみなされるようになったのか──。

ライプツィヒ・ゲヴァントハウスやパリ、ロンドンなど大都市の公開演奏会、プロムナード・コンサートなどの成立過程をたどり、当時の音楽家、音楽批評家、愛好家のあいだでの音楽のイメージの変遷とともに、音楽が「classical」「popular」という二大概念によって再編されていく様子を余すところなく描き出す。

“popular music”の条件は、まず「理解しやすい」こと、そして「新しく」「民衆向き」であること、であった。こうした条件を兼ね備えた音楽が、今日でもそのまま「ポピュラー音楽」のカテゴリーになっている。
一方、(略)「理解しやすくない」ものや「新しくない」ものが“classical music”の中に組み込まれていくのである。
(略)21世紀のいま新しく作り出されている、多くの人たちにとっては難解な「現代音楽」も、全部飲み込んで、「クラシック音楽」は増殖を続けるのである。
──以上、本書第3部より

プロフィール

  • 吉成 順(よしなり・じゅん)
    国立音楽大学教授。博士(コミュニケーション学)。音楽社会史、とくに近・現代の演奏会制度や音楽ジャーナリズム、管弦楽および管弦楽作品の歴史などに関心をもつ。著書『知って得するエディション講座』(音楽之友社)、共著『モーツァルト事典』(東京書籍)、『教養としてのバッハ』(アルテスパブリッシング)、監修書「『正しい』聴き方」シリーズ(青春文庫)など。

CONTENTS

はじめに

 序章 モーツァルトは「クラシック音楽」か?
  1 クラシック音楽という概念がなかった時代
  2 自立する音楽

第1部 ドイツの教養主義的演奏会

 第1章 ライプツィヒとゲヴァントハウス演奏会
  1 ゲヴァントハウスの成り立ち
  2 「音楽監督」メンデルスゾーン
  3 シューマンと『音楽新報』
  4 後継者たち
 第2章 ブレンデルとゲヴァントハウス
  1 ブレンデルの演奏会改革論
  2 ブレンデルの立場
  3 ゲヴァントハウスの演奏曲目
  4 作曲家ごとの傾向
  5 ブレンデルとゲヴァントハウスの違い
  6 教養としての機能
 第3章 オイテルペ音楽協会
  1 ゲヴァントハウスに対抗する演奏会
  2 オイテルペの変遷
  3 演奏曲目の傾向
  4 「進歩派」と「保守派」
 第4章 オーケストラ演奏会のプログラム構成
  1 ベルリン・フィルにみる演目構成の変遷
  2 「伝統」はいつできたのか

第2部 大都会の娯楽的演奏会

 第1章 ロンドンとパリの音楽事情
  1 ロンドンにおける公開演奏会
  2 パリにおける公開演奏会
  3 ディケンズが描いたロンドンの音楽事情
  4 一九世紀初頭ロンドンの演奏会
  5 演奏会の入場料と当時の人々の収入
 第2章 プロムナード・コンサートの始まり
  1 パリのプロムナード・コンサート
  2 ロンドン上陸
  3 ワルツの父の英国公演
  4 プロムナード・コンサートの定着
  5 ミュザールとジュリアンの登場
 第3章 ルイ・ジュリアン
  1 ジュリアン時代の始まり
  2 ジュリアンの演奏会
  3 ジュリアンの影響とその後
  4 ジュリアンの衰退
  5 その後のプロムナード・コンサート

第3部 クラシックとポピュラーができるまで

 第1章 「クラシカル・コンサート」
  1 ジュリアンの「クラシカル・コンサート」
  2 “classical” の意味
 第2章 「クラシック」と「ポピュラー」の成立
  1 音楽における「古典」の成立
  2 “popular” の登場
  3 初期の用語例の調査
  4 “popular music” の成立
  5 “classical music” の成立
  6 「増殖する」クラシック音楽

 結び

 付録:フランツ・ブレンデル「演奏会改革論」(要約)
 おわりに