なぜ日本人はショパンが好きなのか?
明治期に紹介されたショパンの音楽は、わが国でどのように普及していったのか──。
出版譜の受容史、演奏会批評、雑誌記事などを克明にたどり、
「ピアノの詩人」のイメージが形成されていく過程を明らかにする。
《エチュード》op.10(全12曲)のさまざまな異稿を集約したパラダイム楽譜を巻末に掲載!
わが国ではじめてショパンが演奏されてから約150年。
ショパンの音楽が明治期の音楽家、音楽愛好家たちのあいだで受容され、普及していく様子を、東京音楽学校や各地のミッション・スクールなどでの楽譜受け入れ、演奏会批評、図書出版、さまざまなエディションの出版などの実態から跡づける。
巻末に掲載された《エチュード》op.10(全12曲)のさまざまな異稿を集約したパラダイム楽譜は、この作品のさまざまな解釈の可能性を一望にできる貴重なもので、現代の演奏家にとっても有用である。
プロフィール
多田純一(ただ・じゅんいち)
2012年3月、大阪芸術大学大学院芸術研究科博士後期課程修了。博士号(芸術文化学)を取得。音楽学を芹澤尚子氏に、ピアノを藤井美津子、安部ありか、前田則子の各氏に師事。アンジェイ・ヤシンスキ氏の公開レッスンを受講。ショパン作品の指づかい、日本におけるショパン受容、澤田柳吉の音楽活動等の研究にかんする論文多数。講演やレクチャー・コンサートをおこなう。2014年4月、CD『我が国最初の「ショパン弾き」澤田柳吉の世界〜作品篇・演奏篇』(2枚組、ミッテンヴァルト)をリリース予定。現在、大阪芸術大学大学院嘱託助手。大阪健康福祉短期大学非常勤講師。日本音楽学会、日本音楽表現学会、日本音楽教育学会、音楽教育史学会、日本ピアノ教育連盟、日本ショパン協会関西支部各会員。
CONTENTS
はじめに
序 論
I.明治期におけるショパンの楽譜
第1章 音楽取調掛および東京音楽学校に受け入れられた楽譜
第2章 ミッション・スクールとショパンの楽譜
第3章 ショパンの楽譜受容の背景
II.明治期におけるショパン受容
第1章 日本におけるショパン演奏
第2章 明治期における演奏会の批評と雑誌記事に見るショパン
第3章 大正期に出版された図書とレコード
III.明治期に受容された楽譜の比較考察
第1章 ショパン作品のエディション研究
第2章 エディション研究の方法
第3章 《エチュード》op.10 No.1のエディション比較
第4章 《エチュード》op.10 No.3のエディション比較
第5章 《エチュード》op.10 No.12のエディション比較
日本人とショパン
謝 辞
資料・情報提供者
引用・参考文献
巻末資料
巻末楽譜資料 ショパン作曲《エチュード》op.10 のパラダイム化した楽譜