ピアノ大陸ヨーロッパ
19世紀・市民音楽とクラシックの誕生

定価:本体1900円[税別]

  • 四六判・並製 | 296頁
  • 発売日 : 2010年4月20日
  • ISBN 978-4-903951-02-7 C1073
  • ジャンル : クラシック/ピアノ/音楽史
  • 装丁:久保和正

軍艦、大砲、鉄道、そしてピアノ。
工業技術の発展、社会の産業化、経済の国際化、帝国主義──
「クラシックを崇める音楽愛好家」はこの時代に誕生した!

19世紀の最先端科学技術の粋を結集した工業製品、ピアノ。
PART 1では、ピアノの発展、ピアノ音楽創作の歴史をとおして、当時の産業化社会が市民文化を創出し、現代のわたしたちが楽しんでいる「クラシック音楽」を生みだした過程を明らかにする。
PART 2では、パリやウィーン、ロンドン、ベルリン、ライプツィヒなど、個々の都市や国での個性あふれるピアノ音楽にスポットをあてる。
終章では、19世紀ピアノ音楽のもっとも特徴的なジャンル、「ノクターン(夜想曲)」をとりあげて、当時の社会のあり方やひとびとの美意識がどのように反映しているのかを考察する。
全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)のホームページでの連載「ピアノの19世紀」を全面的に改稿し、単行本化。

プロフィール

  • 西原 稔(にしはら・みのる)
    1952年山形生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期退学。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。
    18、19世紀を主対象とする音楽社会史、音楽思想史を専攻。
    著書に『新版クラシックでわかる世界史』『ピアノ大陸ヨーロッパ』(以上アルテスパブリッシング)、『聖なるイメージの音楽』『音楽史ほんとうの話』『ブラームス』『新編 音楽家の社会史』『シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下』(以上音楽之友社)、『ピアノの誕生』『クラシック 名曲を生んだ恋物語』(以上講談社)、『楽聖ベートーヴェンの誕生』(平凡社)、『世界史でたどる名作オペラ』(東京堂出版)。共著・共編書に『ベートーヴェン事典』(東京書籍)、訳書に『魔笛とウィーン』(平凡社)、監訳・共訳書に『ルル』『金色のソナタ』『西洋の音楽と社会(7)ロマン主義と革命の時代』(以上音楽之友社)、『オックスフォード オペラ大事典』(平凡社)などがある。

CONTENTS

はじめに

Part 1 19世紀とピアノ社会

 第1章 市民社会の誕生と音楽
  「鉄」と「家庭」の19世紀
  制度社会とクラシック音楽
  産業化が生みだした「余暇」
  市民階層と合唱文化
  身分の象徴としてのピアノ
  ピアノ文化と合唱文化
  ピアノ文化と規約社会
  「クラシック」の誕生
  宗教化する市民社会
  カタログを埋めつくす大衆的ピアノ小品

 第2章 産業化社会のなかのピアノ
  チェンバロからピアノへ
  バッハやハイドンの作品はどんな楽器で演奏されたのか?
  作曲家たちに愛奏されたクラヴィコード
  ピアノの大量生産がもたらしたピアノ音楽の変容
  技術革新とともに変化をつづけるピアノ
  万博とピアノ
  つぎつぎに出願される特許
  産業化社会の寵児となった作曲家たち
  鉄の文化とピアノ(1)──音域拡大と構造上の課題
  鉄の文化とピアノ(2)──スタインウェイ社の技術革新
  鉄の文化とピアノ(3)──鉄のフレームの工法と材質

 第3章 ピアノの時代の開幕
  音楽雑誌の登場
  音楽雑誌に掲載された新譜案内
  市場価値をうしなったピアノ・ソナタ
  女性とピアノ
  都市ごとに異なる音楽趣味

 第4章 ピアノ教育の19世紀
  ライプツィヒ音楽院の理想
  男女で異なるカリキュラム
  19世紀社会における「女性」の位置
  女性教育としてのピアノ教育
  音楽学校でのピアノ教育と女性の社会進出

 第5章 社会のなかのピアニスト
  鍵盤楽器奏者の身分と地位
  職業としてのピアノ教師
  ピアノ教師の国家資格

Part 2 ピアノ音楽風土記

 パリ
  エラールとプレイエルが切りひらいた19世紀パリのピアノ文化
  19世紀前期フランスのピアノ音楽作曲家たち
  ピアノ教育の系譜
  音楽雑誌にみるパリのピアノ音楽
  外国人の作品をひろめた楽譜出版社

 ウィーン
  ベートーヴェンの楽譜出版とウィーンのピアノ文化
  変奏曲から行進曲へ
  ベートーヴェン時代のドイツ語圏の楽譜出版事情
  ウィーン音楽史の転換期としての1830年
  ウィーンの音楽雑誌にみるピアノ作品の出版傾向
  チェルニーとウィーンのピアノ教育

 ロンドン
  ヨーロッパ最大のピアノ音楽消費国、イギリス
  クレメンティとクラーマー
  19世紀前期ロンドンの作曲家たち
  音楽雑誌にみる音楽趣味の変遷
  ソナタから変奏曲へ
  音楽雑誌と社会階層

 ベルリン
  ピアノ導入の先駆者、フリードリヒ大王
  19世紀ベルリンの音楽サロン
  ベルガーとその弟子たち
  音楽批評と音楽学校
  『ベルリン音楽新聞』の創刊号にみる19世紀初期のピアノ作品

 ライプツィヒ
  音楽出版の町、ライプツィヒ
  聖トーマス学校演奏会とモーツァルトの協奏曲
  バッハ再評価に貢献したライプツィヒ
  シュナイダー一族の活躍

 プラハ
  ボヘミア音楽の歴史と国民主義の高まり
  プラハ・ピアノ音楽の発展

 サンクト・ペテルブルク
  クレメンティとサンクト・ペテルブルク
  フィールドの貢献
  ヘンゼルトとロシア・ピアニズム

 コペンハーゲン
  ヨーロッパの音楽文化の交差点
  ピアノ文化の始まり
  ゲーゼとコペンハーゲンのピアノ音楽
  音楽雑誌にみるコペンハーゲンのピアノ文化
  「クラシック」が根づいたコペンハーゲンの音楽環境

 ストックホルム
  強国スウェーデンの音楽環境
  投稿作曲家と地元作曲家の活躍
  編曲作品の隆盛と音楽の大衆化

 アメリカ
  ヨーロッパ文化の入口、ニュー・イングランド
  ゴッチョークとアメリカ民俗音楽へのまなざし
  19世紀後半のアメリカのピアノ音楽
  マクダウェルの登場
  ヨーロッパ伝統の継承とアメリカ音楽のはざまで

 イタリア
  クリストフォリとイタリア・ピアノ音楽の伝統
  ピアノ音楽作曲家、ドニゼッティ
  ドイツ音楽へのまなざし

 スペイン
  スカルラッティ以後のスペイン・ピアノ音楽
  アルベニスのピアノ作品が描いたスペイン
  グラナドスとファリャ
  ロドリーゴのピアノ作品
  中南米の作曲家のピアノ作品

終章 ノクターンと19世紀のピアノ文化
  19世紀に登場したさまざまなジャンル
  ノクターン文化の始まり
  遅いテンポの美学
  ソナタの中間楽章が獲得した新たな意味
  夜の音楽
  ペダルの美学
  ノクターンの源流としての協奏曲の第2楽章
  フィールドのノクターンのもつ多様な音楽世界
  ノクターンの表現語法
  フィールドとショパン
  ノクターンとロシア・リリシズムの系譜
  19世紀後半のフランスに花開いたノクターン
  フォーレのノクターンとサロン
  サティとドビュッシー

あとがきにかえて──ポスト〈クラシック〉時代のピアノ文化をもとめて
  グローバリゼーションとピアノ文化
  クラシックとポピュラーの結節点としてのピアノ
  19世紀音楽の暗黒大陸、ヨーロッパに光をあてるために

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