和声を理解する
バス音からの分析

定価:本体3800円[税別]送料:国内無料

  • B5判・並製(ビニールカバー装) | 304頁
  • 発売日 : 2023年3月24日
  • ISBN 978-4-86559-271-9 C1073
  • ジャンル : 音楽理論
  • ブックデザイン:中島 浩

古今の名曲から学ぶ和声法。
従来の教本では困難な「独習」を可能にした 画期的なテキストが誕生!

様式和声の考え方をうまく用いれば、和声を実際の音楽に即して経験し、それと同時に、そうした経験を通じて調性音楽の和声というものの基本的な原理を学ぶことができるはずです。
本書は、まさにそうした意図のもとで書かれた和声教本です。音楽を深く学ぼうとする人々にとって、この教本が、和声への「耳」と「眼」を養う大きな助けとなるに違いない。
そう信じて疑いません。
──近藤譲「緒言」より

海外で一般的な和音記号を使用し、和声のさまざまな規則を教えるだけでなく、古今の名曲において諸規則がどう適用されているかを解説することで、従来の教本では困難な「独習」も可能にした。

国際的に活躍する作曲家が共同執筆し、愛知県立芸術大学、お茶の水女子大学での3年間の使用をへて、満を持しての一般発売。

ためし読みはこちらから▼
https://hanmoto9.tameshiyo.me/9784865592719

プロフィール

  • 山本裕之(やまもと・ひろゆき)
    作曲家。東京藝術大学大学院修士課程修了。愛知県立芸術大学教授、お茶の水女子大学、東京藝術大学各非常勤講師。管弦楽から室内楽、声楽、吹奏楽などさまざまな編成の作品を発表。作品に《輪郭主義》シリーズなど。日本、ヨーロッパ、北米などを中心に演奏されている。コンサートの企画、運営なども手がける。BMW musica viva作曲賞第3位(ドイツ/1998)、2002年度武満徹作曲賞第1位、第13回芥川作曲賞(2003)などを受賞。

  • 久留智之(ひさとめ・ともゆき)
    作曲家。イタリア政府の奨学金を得てミラノG.ヴェルディ音楽院で学び、ローマ・アカデミア聖チェチリア修了。東京藝術大学大学院修了。広島大学大学院准教授、愛知県立芸術大学教授を歴任し、現在は名古屋音楽大学特任教授、愛知県立芸術大学名誉教授。

  • 小林聡羅(こばやし・あきら)
    作曲家。東京藝術大学卒業、同大学院音楽研究科修士課程修了。第1回カルロス・チャヴェス国際作曲コンクール第1位受賞、日本交響楽振興財団第10回作曲賞受賞など、内外にて受賞多数。1996年文部省在外研究員(フィンランド国立シベリウス・アカデミー)。愛知県立芸術大学教授、名古屋音楽大学非常勤講師、日本現代音楽協会、日本作曲家協議会会員、全日本児童音楽協会理事。

  • 成本理香(なりもと・りか)
    作曲家。愛知県立芸術大学音楽学部作曲専攻を首席で卒業、桑原賞受賞。同大学院修士課程、博士後期課程修了。博士号取得。第29回入野賞、Iron Composer Competition第3位(USA)、和歌山県文化表彰文化奨励賞、愛知県芸術文化選奨新人賞などを受賞。Asian Cultural Council(USA)フェローに選出され招聘を受けてニューヨークに居住しアメリカの現代芸術研究に従事した。近年はクロスジャンルをテーマに作曲している。愛知県立芸術大学教授。金城学院大学、名古屋芸術大学各非常勤講師。

  • 近藤譲(こんどう・じょう)
    作曲家。お茶の水女子大学名誉教授。昭和音楽大学教授。アメリカ芸術・文学アカデミー海外名誉会員。作曲作品は、オペラ《羽衣》など多数。主著に『線の音楽』『聴く人(homo audiens)』(以上、アルテスパブリッシング)、『ものがたり西洋音楽史』(岩波書店)、主な訳書にM.E.ボンズ『「聴くこと」の革命』(共訳、アルテスパブリッシング)、D.ヒューズ『ヨーロッパ音楽の歴史』(共訳、朝日出版社)ほか。

CONTENTS

 緒言(近藤譲)
 はじめに(山本裕之)

第1章 基本編

i. 和音とは何か
 1. 西洋古典音楽における「和音」の定義
 2. 構成音の名称
 3. 和音の原型と大譜表表記
 4. 和声とは何か

ii. 和音の構造
 1. 音程
 2. 和音の協和と不協和

iii. 調と和音記号
 1. 教会旋法と調の定義
 2. 和音記号

iv. 和音構造と数字付き低音
 1. 三和音の構造変化と転回形
 2. 数字付き低音
 3. 転回形の和音記号
 4. 転回形と「拡張和音」「経過和音」

v. 和音の機能とカデンツ
 1. 導音
 2. 和音の度数による機能

vi. カデンツと和音の機能強度
 1. バス音の「強い」機能
 2.「 弱い」機能

vii. 終止
 4つの終止形

viii. 4声体の配置
 1. 4声体
 2. 書き方
 3. 声部の音域と配置のバランス
 4. 各構成音の配置
 5. 重複できない音
 6. 第3音の重複
 7. 省略できる構成音

ix. 声部進行の原則
 1. 声部進行上の制限
 2. 声部相互の関係
 3.「連続」の禁則、「並達」の制限

x. 掛留音と第7音
 1. 掛留音と予備
 2. 7度掛留を表す数字
 3. 掛留音の重複禁止

xi. 七の和音
 1. 七の和音の種類と不協和性
 2. 七の和音の転回形
 3. 七の和音の数字および記号表記
 4. 七の和音の響きと転回形がもつ性質
 5. 予備音と限定進行音
 6. 重複できない音
 7. 避けられない第3音の重複
 8. 第5音の省略
 9. バス音からみた七の和音の機能

xii. V7・vii6の和音
 1. V7の性質
 2. V7の基本形および転回形の配置と連結
 3. vii6の配置およびIまたはI6への連結

第2章 和音外音

i. 掛留音
 1. 掛留音
 2. 掛留音を表す数字
 3. 二重掛留音

ii. バロック時代の和音外音
 1. 経過音
 2. 隣接音、二重隣接音
 3. 先取音
 4. カンビアータ

iii. 古典派以降の和音外音
 1. 倚音、二重倚音
 2. 逸音
 3. 上行掛留音
 4. 和音外音の半音階化
 5. 強拍と弱拍

iv. 和音外音の還元
 還元と分析

第3章 バス音型と機能

i. バス音と基本形の和音・拡張和音
 1. バス音の2度上行、下行
 2. バス音の3度上行、下行
 3. バス音の4度上行、5度上行

ii. バス音と経過和音
 1. I6/4
 2. IV6/4
 3. V4/3、V6/4
 4. 2の和音

iii. 機能原則からの逸脱
 1. SにI6/4が挟まれるカデンツ
 2. DにIV6が挟まれるカデンツ
 3. TにIIが挟まれるカデンツ
 4. 挟まれるカデンツの複合

第4章 機能的和声進行の原理

i. 強進行
 根音の5度進行

ii. 全終止・変終止
 1. 全終止の形態
 2. 全終止時の先取音
 3. Sを前置する全終止
 4. 変終止の形態

iii. 弱進行
 1. 根音の3度進行
 2. 根音の2度進行
 3. 2度進行の声部処理

iv. VIの和音
 1. VIの和音の機能と性質
 2. VIの和音の2度進行

v. 偽終止
 偽終止の特徴

vi. 強進行ゼクエンツ
 1. ゼクエンツの仕組み
 2. ゼクエンツの継続と終了

vii. 弱進行ゼクエンツ
 1. 弱進行のみによるゼクエンツ
 2. 強進行を交えた弱進行ゼクエンツ

viii. 半終止
 1. 半終止の特徴
 2. フリギア終止

第5章 転調

i. 転調の原理
 1. 転調の種類と仕組み
 2. 転調の分類
 3. 対斜
 4. ピボット和音

ii. 代表的な転調
 1. 長調の属調への転調
 2. 短調の平行調への転調

iii. その他の近親調転調
 1. 平行調への転調
 2. 属調方向への転調
 3. 下属調方向への転調

iv. 一時的な転調:借用和音
 1. ドッペルドミナント
 2. ドッペルドミナントの後続和音
 3. 下属調方向からの借用
 4. 同主短調からの借用

v. 転調の確定
 転調と終止

vi. 転調の連鎖
 1. 経過的な転調
 2. 半音階的転調

vii. 同主調転調
 同主調転調の種類と効果

viii. 遠隔転調
 1. 2度調、3度調への転調
 2. 異名同音調への転調

第6章 和音の種類の拡大

i. 九の和音
 1. 属九の和音の配置と限定進行音
 2. V9の進行と第9音の限定進行音
 3. V9の用例

ii. VII7と減七の和音
 1. 長調におけるVII7
 2. 短調におけるVII7と転回形
 3. 減七の和音による異名同音転調
 4. 減七の和音の近親調からの借用

iii. ナポリの六の和音
 拡張和音としての「ナポリの六の和音」

iv. 増三和音
 拡張和音としての増三和音

v. 増六の諸和音
 1. ドッペルドミナントとしての増六の和音
 2. 増六の和音による遠隔転調への応用

vi. IVの付加和音
 1. 付加4の和音
 2. 付加6の和音
 3. 付加46の和音

第7章 和声とリズム

i. 強拍と弱拍
 1. 強拍と弱拍の区分け
 2. 強拍の機能支配性
 3. 終止形の機能支配性
 4. ヘミオラ

ii. 和音設定とリズム
 1. 和音の区分け
 2. 機能配分のむら

iii. 保続音
 保続音と機能

第8章 模倣

i. 2声模倣
 1. バス音と2声の模倣
 2. 和声的声部を含む2声の模倣
 3. バス声部を含む模倣

ii. 多声模倣
 多声部による模倣

第9章 和声のさらなる応用と展開

i. 和音化する和音外音の促進
 1.「 意外な響き」を作り出す和音外音
 2. 臨時記号と異名同音

ii. トニック外の機能からの開始
 Tを避ける開始機能の効果

iii. 主調外の調性からの開始
 1. 偽の調性の提示
 2. 曖昧な調性の提示

iv. D和音における下方変位音

 おわりに
 主要参考文献
 引用譜例索引
 索引