ビートルズ 創造の多面体

定価:本体2400円[税別]送料:国内無料

  • 四六判・上製 | 392頁
  • 発売日 : 2022年11月25日
  • ISBN 978-4-86559-266-5 C1073
  • ジャンル : 洋楽ロック
  • 装丁:岩瀬聡

4人の創作プロセスをたどって発想の源泉に迫る!
先駆的なクリエイティヴィティとその現代的意義を
多角的に解き明かす書き下ろしビートルズ論!

彼らはなぜ史上最高のバンドとなったのか?
なぜ今も世界を自由で豊かにしているのか?

英リヴァプールで誕生したビートルズがデビュー・シングル
〈ラヴ・ミー・ドゥ〉をリリースしてからちょうど60年。
今年は長編ドキュメンタリー映画『Get Back』も公開され、
彼らの音楽が放つ普遍的な魅力にあらためて注目が集まっています。

60〜70年代の文化や社会、メディアとの相互作用のなかで、
彼らは何を感じ、何を求め、何をなしたのか?
斬新な作曲技法も多彩な観点とあらたな手法であざやかに分析!

若いリスナーをいまなお獲得しつづけるビートルズの
新しさと創造性、現代における意味を多角的に解き明かします。

戦後社会の文化論、メディア論、消費社会論としても読み応え十分、
音楽と社会を総合的にとらえた本格派ビートルズ論の登場です!

巻末に豊富なコード譜例と音楽用語集も掲載!

──本書「はじめに」より
……ビートルズの音楽を分析的に語るということは、楽曲にあらわれる音の選択を解明しながら、そこにどのような美的基準や問題意識があったかを読み解く過程になります。その選択や方法は、必ずしも彼ら自身が、言語化した上で意識してはいないものでしょう。しかし、むしろ本書では、その言語化されていない部分にこそ迫りたいと考えています。

……資料と楽曲にあたり、点と点をつないで線を結ぶ。複数の線は、やがて面となり、多方向へと光を放つビートルズという多面体の姿があらわれてくる。その過程を読者とともに楽しみたいと思っています。

プロフィール

  • 高山 博(たかやま・ひろし)
    作曲家/著述家 Composer / Writer
    大阪出身。学生時代よりバンド活動を始め、関西ライブシーンで活躍。大阪芸術大学に進学し、クラシックの作曲及び、日本やアジア音楽を中心とした民俗音楽学、大型モジュラー・シンセサイザーを使った電子音楽の技法を、学外でジャズピアノ及びジャズ理論を学ぶ。
    卒業後すぐに作編曲家として仕事を始め、NHK銀河テレビ小説『妻』、テレビ朝日『題名のない音楽会』(出演)、日本・インドネシア合同舞台作品『ボロブドゥールの嵐』、香川県芸術祭『南風の祭礼』、自らのバンドCharismaのアルバム『邂逅』(キングレコード)の他、『W.I.N.S』W.I.N.S.(ビクターエンタテインメント)、『Super-Nova』KoKoo(キングレコード)などに多数の楽曲を提供。
    並行してDAWやシンセサイザーなどのテクニカルな解説、作曲や編曲理論、音楽や映画批評などを雑誌等に寄稿。著書も数多く、おもなものに『ビートルズの作曲法』、『ポピュラー音楽作曲のための旋律法』(いずれもリットーミュージック)がある。
    近年は後進の指導にも注力し、個人レッスンのほか、東京藝術大学大学院映像研究科非常勤講師、東京工芸大学アニメーション専攻非常勤講師、美学校作曲講座講師をつとめる。

CONTENTS

はじめに

第1章 戦後社会とビートルズの誕生
戦後イギリスの好景気と福祉社会の実現
兵役からの解放
〝若者〟の登場
怒れる若者たち
水平的に結びつき世間に対峙する
円環の完成─ビートルズという関係
天啓としてのロックンロール
スキッフルの発見
とにかくやってみようぜ!
スピードとユーモア
具現化された理想の関係

第2章 ロックンロールとポップス感覚
肌感覚で知ったウケる喜び
音楽が死んだ日
ソウルミュージック/R&Bへの接近
伝統的なポピュラー音楽を取り入れる
ブルーな感覚の対象化─〈Love Me Do〉
ジョージ・マーティンのプロデュース感覚
ヒットの方法を模索する──〈Please Please Me〉
スタジオで呼応する4+1人
イケてる感覚、ウケる喜び
「ついてこいよ、一緒に楽しもうぜ」

第3章 寂しいビートルズ
切なさに寄り添う
ビートルズのメランコリー
無力な僕
ブルーノートを咀嚼する
ブルースの憂鬱、ロックンロールのふてぶてしさ
はっきりと始まり、あいまいに終わる
ブルーノートとマイナーの響き
長調の曲を短調のように歌う

第4章 メディア化する社会とリアリティのありか
メディアの時代
彼方から呼びかける声
電話とテレビ─近づくほどに遠ざかる
価値観を映す
メディア化する社会を歌う
ボブ・ディランとの出会い
ジョンの居場所
ポールの恋
叙事と叙情
ジョージの成長
ロックの誕生

第5章 協調と競争──作曲技法の進化
協調と競争
作曲技法の開発─〝低音下行〟
作曲技法の開発─リフの導入
リフの肉体性を社会批評と結びつける
一人で歌う─カントリーとフォーク
トラッドへと遡る
フォークロック──繊細さの獲得
新しい和声感覚の開拓
垂直的なサウンドの豊かな響き

第6章 アートとサイケデリック──意識の拡大
インテリビートルズ
アートスクールの自由な環境とスチュとの出会い
ハンブルクの若きアーティストたち
最良の庇護者─ブライアン・エプスタイン
最後のピース─ジョージ・マーティン
叛逆のシュールレアリスム
スウィンギング・ロンドンの名士
アッシャー家とインディカ・ギャラリー&ブックス
ドラッグと内面への旅
同時代のアートシーンへの接近
サイケデリックとジョンの内面への旅
サイケデリックとポールの不安
サイケデリックとジョージの内観
ブライアン・ウィルソンとの交流
若者による文化的革命の記念碑
サイケデリックからの離脱

第7章 世界の再定義
レコーディングスタジオの可能性を開く
クラシック音楽を解放する
型にとらわれないオーケストラサウンドの使用
あらゆる音楽を再定義する
サウンドによるパロディ
発言力の増大と社会意識の高まり
恋人であり同士であり導師であり母でもある
自己言及と自己批評
同時代のロックと並走する
ビートルズをリセットする
ポピュラー音楽の頂点のさらに頂点
ビートルズの終焉

第8章 ビートルズとは何だったのか
同一化の拒否
未来における喪失が現在の疎外へと向けられる
ブリコラージュ精神によるロックンロールとアートの融合
音楽の時間を新たに組織し、解放する
大西洋を越える創造の潮流
メディアとテクノロジーに対する主体性
消費を創造に転じ続ける
ビートルズであること、ビートルズであるのをやめること
ビートルズ後の世界

あとがき

主要参考資料
曲名索引
アルバム・映画名他索引
人名索引
付録
音楽用語集