追悼:アンナー・ビルスマ(1934–2019)
古楽運動を牽引したバロック・チェロの巨匠が語る
「音楽」「楽器」「人生」。
音楽は「言葉」。
そして、演奏とは「語る」こと──。
草創期の古楽運動を牽引した
バロック・チェロの巨匠が
日本を代表するチェンバロ奏者と語り合う。
レオンハルト、ブリュッヘンらとの交遊、
「セルヴェ」ストラディヴァリウスなど名器・愛器、
バッハ《無伴奏チェロ組曲》などをめぐる
音楽論・演奏論を語り尽くす!
幼少時代〜古楽創世記・現代までの貴重な写真を多数掲載。
2019年7月25日に逝去したアンナー・ビルスマを偲び、
普及版として新装発売!
ためし読みもできます! こちらからどうぞ。
矢澤孝樹氏(音楽評論)
喜びに満ちて、夢中でページをめくっていた。
読み終えて、すべてのクラシック・ファンにお勧めしたい一冊だ! と快哉を上げたくなった。
──レコード芸術 2017年3月号
那須田務氏(音楽評論家)
ビルスマの言葉は人柄そのままに音楽と人間への愛に溢れ、物事の本質を突いていて心に響く。
その上ユーモアたっぷり。読みながら大いに笑った。
──音楽の友 2017年1月号
横川理彦氏(音楽家)
“柔らかで、美しい音楽を楽しもうじゃないか”という
ビルスマのメッセージがひしひしと伝わってくる。
──サウンド&レコーディング・マガジン 2017年2月号
毎日新聞、産経新聞ほか各紙誌絶賛!
※本書は2016年にCD付き書籍として刊行された
『バッハ・チェロ・古楽──アンナー・ビルスマは語る』から書籍を独立させ、
共著者・渡邊順生による序文を追加し、
その他加筆・訂正をほどこした新装版です。
旧版の付属CDは2020年3月、コジマ録音から
『アンナー・ビルスマin東京』と題して発売されました。
http://www.kojimarokuon.com/disc/ALCD1196.html
プロフィール
アンナー・ビルスマ(Anner Bylsma, 1934–2019)
1934年2月17日、オランダのハーグに生まれる。コンセルトヘボウ管弦楽団のチェロ奏者カレル・ファン・レーウェン゠ボームカンプに師事し、1957年ハーグ王立音楽院を卒業。1959年にはメキシコのパブロ・カザルス国際チェロ・コンクールで第1位に入賞。1962年から68年にかけてアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団で首席奏者を務めるかたわら、バロック音楽にも積極的に取り組み、特にリコーダーのフランス・ブリュッヘン、チェンバロのグスタフ・レオンハルトとのアンサンブルは「黄金のトリオ」の異名を取った。
1970年代に入ると、バロック・チェロによるバッハ《無伴奏チェロ組曲》を世界各地で演奏し、1979年にセオン・レーベルに全曲録音をおこなう。室内楽にも意欲的で、オリジナル楽器によるフレキシブルな編成の弦楽アンサンブル「ラルキブデッリ」を結成して多様な活動を展開するいっぽう、ピアニストで作曲家のラインベルト・デ・レーウらとともに現代音楽のアンサンブルである「ロンドム・クヮルテット」を結成し、メシアンの《世の終わりのための四重奏曲》などで高い評価を得た。バロックから古典・ロマン派を経て、近・現代の音楽にいたるまであらゆる時代のチェロ音楽を手がけたが、そのいずれにおいてもガット弦を張ったチェロを用い、ニュアンス豊かで生き生きとした演奏をおこなった。
1962年に録音活動を開始し、独テレフンケンを皮切りに、ドイツ・ハルモニア・ムンディ、セオン、BASF、フィリップス、EMIなどのレーベルから多数のレコード・CDをリリース。1990年代からはソニー・クラシカルの古楽専門レーベルVIVARTEを中心に数多くの録音を残し、なかでも1992年にストラディヴァリ作の名器「セルヴェ」(モダン仕様)をもちいておこなったバッハの《無伴奏組曲》の再録音は、世界中の弦楽器界に大きな反響を巻き起こした。
著作に『バッハ──フェンシングの達人(Bach — the Fencing Master)』(1998)、『バッハのセンツァ・バッソ(BACH senza BASSO)』(2012)、『バッハと特権的少数派(Bach and the Happy Few)』(2014)、『落としもの──バッハ《無伴奏チェロ組曲》の最初の3曲のための練習帳(Dropping — An Exercise Book for the First Three Cello Suites of Johann Sebastian Bach)』(2015)などがある。
2019年7月25日、アムステルダムで逝去、享年85。渡邊順生(わたなべ・よしお)
1950年、鎌倉市に生まれる。チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード奏者および指揮者として活躍。2010年度サントリー音楽賞受賞。一橋大学社会学部卒。アムステルダム音楽院でグスタフ・レオンハルトに師事。1977年、最高栄誉賞付きソリスト・ディプロマを得て卒業、またプリ・デクセランス受賞。フランス・ブリュッヘン、アンナー・ビルスマ、ジョン・エルウィスら欧米の名演奏家・名歌手たちと多数共演。ソニー、コジマ録音、創美企画などから多数のCDをリリース。2006年、崎川晶子との共演による『モーツァルト/フォルテピアノ・デュオ』でレコード・アカデミー賞(器楽曲部門)を受賞。著書に、『チェンバロ・フォルテピアノ』(東京書籍)、校訂楽譜に『モーツァルト:幻想曲とソナタ ハ短調』、『モーツァルト:トルコ行進曲付きソナタ』(ともに全音楽譜出版社)などがある。加藤拓未(かとう・たくみ)
1970年、アメリカ合衆国ワシントン州シアトル生まれ。専門はJ.S.バッハを中心とするドイツ宗教音楽史(特に受難曲の歴史)。国立音楽大学大学院修了。明治学院大学大学院博士後期課程修了(博士〔芸術学〕)。NHK-FM「バロックの森」「ベストオブクラシック」に解説者として出演。著作に『バッハ・キーワード事典』(春秋社)など。現在、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員、合唱団「バッハ・ゲゼルシャフト東京」代表、NHK-FM「古楽の楽しみ」案内役。
CONTENTS
新装版への序(渡邊順生)
プロローグ(加藤拓未)
第1部 音楽活動、仲間たち、そして人生
シモン・ゴルトベルク
父のこと
ハーグ王立音楽院への入学
恩師レーヴェン・ボームカンプ
ネーデルラント歌劇場管弦楽団
カサルス・コンクール優勝
スランプ
ブリュッヘンとの出会い
音楽家の「キャリア」について
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
古楽へのシフト
テレマン《パリ四重奏曲》の録音
初期の活動──ブリュッヘンとレオンハルト
ヴォルフ・エリクソン
オランダ古楽界のこと
ロンドム・カルテット
フェラ・ベッツとの出会い
ラインベルト・デ・レーウ
マテイス・フェルミューレン
ブダペストのリスト賞
バッハの《無伴奏チェロ組曲》に取り組み始めた頃
ハルモニア・ムンディでの録音
「セルヴェ」ストラディヴァリウスとの出会い
旅する音楽家
日本人の古楽演奏家とその聴衆
アムステルダム音楽院
チェロのレッスン
弟子たち
鈴木秀美
ラルキブデッリ
音楽文庫
私の病気について
理想の演奏会
ビルスマのアルバムから
第2部 チェロ、センツァ・バッソ
チェロについて
所有している楽器
チェロ・ピッコロ
「セルヴェ」ストラディヴァリウス
バロックとモダン──チェロの構造の変化について
〈エンドピン〉
〈ガット弦〉
〈スティール弦〉
〈弓について〉
〈楽器本体の変化〉
音楽は「物語」
重要な音、重要でない音
「語る」音楽
聴衆とともに演奏する
「線の太い」音楽と「語る」音楽
バッハのセンツァ・バッソ
バッハの無伴奏楽曲とは?
3つの通奏低音手法
アンナ・マクダレーナ・バッハの写本について
第3部 《無伴奏チェロ組曲》の奏法
「ボウイングの原則」11箇条
バッハの「エトセトラ」と「ゼクヴェンツ」
《無伴奏チェロ組曲》第1番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5メヌエット
6 ジーグ
◎フランス様式とイタリア様式のボウイング
《無伴奏チェロ組曲》第2番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5 メヌエット
6 ジーグ
◎運指法にかんして
《無伴奏チェロ組曲》第3番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5 ブーレ
6 ジーグ
◎6つの組曲が作曲された順番は?
《無伴奏チェロ組曲》第4番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5 ブーレ
6 ジーグ
◎ヴィオラ演奏説
《無伴奏チェロ組曲》第5番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5 ガヴォット
6 ジーグ
◎ヴァイオリンの名手バッハ
《無伴奏チェロ組曲》第6番
1 プレリュード
2 アルマンド
3 クーラント
4 サラバンド
5 ガヴォット
6 ジーグ
第4部 音楽について、そしてボッケリーニ
「文化」と「芸術」の違い
演奏家について──グレン・グールド、パブロ・カサルス
室内楽
ヴィヴァルディの音楽
ベートーヴェン
モーツァルトの協奏交響曲(未完成)の第1楽章
ボッケリーニについて
弦楽五重奏曲の録音
作曲家ボッケリーニ
「ボッケリーニのメヌエット」
ボッケリーニの音楽と時代精神
ボッケリーニの弱音表示
「人を楽しませる」音楽
ハイドン、ベートーヴェンとボッケリーニ
ボッケリーニの「サウンド」
シューベルトへの影響
ボッケリーニの消滅
ビルスマの思い出と彼の芸術(渡邊順生)
ビルスマの思い出
ビルスマの演奏
佐々木節夫メモリアル・コンサート
ビルスマのレコード
アンナー・ビルスマ・コレクション
ヴォルフ・エリクソンとダス・アルテ・ヴェルク・シリーズ(テレフンケン)
セオンとBASF
1980年代の録音
ヴィヴァルテと1990年代
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ
バッハの《無伴奏チェロ組曲》のDVD