図書館には人がいないほうがいい

定価:本体1600円[税別]送料:国内無料

  • 四六判変型・並製 | 240頁
  • 発売日 : 2024年6月26日予定
  • ISBN 978-4-86559-294-8 C0036
  • ジャンル : 出版/図書館/読書
  • 装幀:櫻井久、中川あゆみ(櫻井事務所) 装画:高橋常政

コモンとしての書物をベースに新しい社会を作るために
司書、図書館員、ひとり書店、ひとり出版社……
書物文化の守り手に送る熱きエール

世界でただ一人の内田樹研究家、朴東燮氏による韓国オリジナル企画の日本語版を刊行!

2023年の講演「学校図書館はなぜ必要なのか?」をメインに、日韓ともにきびしい状況に置かれている図書館の本質と使命、教育的機能、あるべき姿を説き、司書や図書館人にエールを送る第1部「図書館について」と、「出版は伝道活動である」(2024年の講演)、「書物は商品ではない」などで、「読む」ことの意味や本の未来などを語る第2部「本と出版について」で構成。

朴東燮氏の卓抜な内田樹論「『伝道師』になるということは」と
李龍勳氏の推薦文「『図書館的時間』を取り戻すために」を収録

[本文より]
僕は図書館というのも、本質的には超越的なものを招来する「聖なる場所」の一種だと思っています。だから、空間はできるだけ広々としていて、ものが置かれず、照明は明るすぎず、音は静かで、生活感のある臭気がしたりしないことが必要だと思います。低刺激環境であることが必要だと思う。

プロフィール

  • 内田 樹 うちだ・たつる
    1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)、思想家、神戸女学院大学名誉教授。東京大学文学部仏文科卒。2011年11月、合気道の道場兼私塾「凱風館」を開設。『寝ながら学べる構造主義』『日本辺境論』『下流志向』をはじめ多くのベストセラーをもつ。 近著に『勇気論』(光文社)、『小田嶋隆と対話する』(イースト・プレス)、『だからあれほど言ったのに』(マガジンハウス)、『凱風館日乗』(河出書房新社)があるほか、『困難な結婚』『もういちど村上春樹にご用心』(アルテスパブリッシング)、『街場の米中論』(東洋経済新報社)など著書・共著多数。

  • 朴東燮(ばく・どんそっぷ)
    1968年、釜山生まれ。独立研究者。筑波大学総合科学研究科卒業(心理学博士)。
    主な著書(韓国語)に『心理学の彼方へ』『レプ・ヴィゴツキー(歴史・接触・復元)』『ハロルド・ガーフィンケル(自明性・複雑性・一理性の解剖学)』『成熟、レヴィナスとの時間』『内田先生に学ぶ方法』『動詞として生きる』『会話分析:人々の方法の分析』がある。世界でただ一人の内田樹研究家でもあり、内田樹著『先生はえらい』『ためらいの倫理学』『レヴィナスの時間論』『街場の教育論』の、また森田真生著『数学の贈り物』、三島邦弘著『ここだけのごあいさつ』などの韓国語版翻訳者でもある。

CONTENTS

日本語版のためのまえがき

第1部 図書館について

図書館とは、そこに入ると「敬虔な気持ちになる」場所
図書館の戦い
 無知を可視化する装置

学校図書館はなぜ必要なのか?
 Ⅰ 図書館は巨大なアーカイブの入り口である
   緩い中間共同体の必要
   供養の本質
   「この世ならざるもの」について
   村上春樹と上田秋成
   『羊をめぐる冒険』と四つの系譜作品
   『徒然草』を現代語に訳してみて
   書物は母語のアーカイブへの入り口
 Ⅱ 図書館は新しい世界への扉である
   図書館が教える「無限」という概念
   図書館の教育的機能
   ゆっくりと「聖なるもの」から切り離してゆく場所
   異界に通じる扉を守るゲートキーパー
   「超越的なもの」への敬意
   「書物を守る」拠点
 Ⅲ 図書館には魔法使いの居場所を確保しなければならない
   学校には子どもたちの「とりつく島」が必要
   子どもたちが無防備になれるミステリーゾーンを作る
   読むのはどんな本でもいい

第2部 書物と出版について

本の未来について
書物は商品ではない
倉吉の汽水空港でこんな話をした
自戒の仕掛け──無知の自覚について
朝の読書運動
ScanとReadの違い
本が読む
リテラシーの高い読者を育てる方法
活字中毒患者は電子書籍で本を読むか?
書物の底知れぬ公共性について──すごく長いあとがき
   「書物の共有」から「新しいコモン」へ
   書物はできるだけ無償で贈与されるべきである
   書物の尊厳を傷つけるなかれ

李龍勳(イ・ヨンフン、図書館文化批評家)
「図書館的時間」を取り戻すために──本書を推薦する

朴東燮(バク・ドンソップ)
「伝道師」になるということは──編訳者あとがきに代えて

初出一覧
プロフィール