「デザインは遊びだ。野暮や退屈になったらおしまい」
半世紀以上にわたって日本のグラフィックデザインをリードしてきた
マエストロ、仲條正義のオーラル・バイオグラフィー(口述自叙伝)。
資生堂のPR誌『花椿』のアートディレクターを40年以上務めたほか、
同パーラーのロゴとパッケージデザイン、
銀座松屋や東京都現代美術館、カゴメなど数多くのロゴをはじめ、
斬新で粋なデザインを世に送り続けてきた仲條正義が、
キャリアを振り返りながら、デザインとはなにか? を自ら語ります。
巻頭にはホンマタカシ撮影の著者ポートレートと、
『花椿』など主な仕事をカラー32ページで掲載しています。
クリエイター9人が仲條との仕事を語る「仲條正義と私」も収録!
証言者たち▶
伊藤佐智子(ファッションクリエーター)、後藤繁雄(編集者)、
篠山紀信(写真家)、高橋歩(クリエイティブディレクター)、
平山景子(編集者)、穂村弘(歌人)・ホンマタカシ(写真家)、
三浦憲治(写真家)、山本ちえ(スタイリスト)
(仲條正義氏は2021年10月に逝去され、本書は大変残念なことに
追悼出版となりました。ここに謹んで哀悼の意を表します)
プロフィール
仲條正義(なかじょう・まさよし)
1933年東京生まれ。東京藝術大学美術学部図案科を卒業後、資生堂宣伝部を経て、1961年に仲條デザイン事務所を設立。資生堂の企業文化誌『花椿』のアートディレクターを40年以上務めたほか、資生堂パーラーのパッケージや松屋銀座、東京都現代美術館のロゴなどを手がけた。98年に紫綬褒章、2006年に旭日小綬章を受賞。2021年10月26日没。
CONTENTS
カラー口絵「Nakajo Works」
第一章 『花椿』のアートディレクターになるまで
大工の息子に生まれて、戦争を体験する
中学でデッサンに夢中になる
藝大時代の財産は同級生
日宣美の奨励賞を受賞する
学生時代にプロの現場でアルバイトを始める
資生堂に入社するが、生意気な社員だった
資生堂を三年、デスカを一年で退社
仲條デザイン事務所を設立
『花椿』の仕事が舞い込む
[仲條正義と私]
平山景子「ゆるぎない仲條イズムと『花椿』と共に」
高橋歩「きれいにやりすぎるなというアンチテーゼ」
第二章 デザインは文字である
文字組みは音楽だ
カレンダーをデザインで面白くする
アルファベットは勝手にやるしかない
デザインが歌になる感覚
日本語の特殊性を考える
興味さえあれば読んでもらえる
読者の目を引くための違和感
手書きで書体をつくる方法
日本人デザイナーが目指すべき文字
ロゴにも流行がある
突っ込みどころのあるデザイン
優れたフォントは歴史を伴って生まれる
[仲條正義と私]
後藤繁雄「美しい矛盾」
穂村弘「仲條さんはひとりだけ違う作業をしているのかもしれない」
第三章 デザインを完璧にしない
雑誌はイメージで読者の目を引くこと
デザイナーの個性は体質や手垢のように出るもの
アイデアは井戸の水のように汲んでも枯れずに出てくる
デザインを論理的に詰めることに違和感を持つ
イメージを押しつけるのは野暮
迷うことが嫌いだ
カメラマンには教養が重要
映画はイメージで見る
ポスターは下手くそ
イメージを高いレベルで定着させる大変さ
借りた写真はレイアウトで鈍くなる
僕は広告が合わない
[仲條正義と私]
篠山紀信「ちゃんとした世界じゃないものは、ちゃんとした世界じゃない人に頼む」
三浦憲治「完成度に厳しいのに、現場では全然厳しくない」
第四章 『花椿』は強度の高い遊びだ
雑誌は視覚で語るもの
シェイクスピアをお題に遊ぶ
パリ・ロケは現地でアイデアを変えた
キャスティングありきのリトアニア・ロケ
作家性の強い写真家でイメージをつくる
映画仕立ての写真の訴求力
ロンドンのクラシックとアヴァンギャルドの両面を撮る
ハワイでポパイを遊ぶ
SF映画をネタ元に、粗さがばれないように暗いイメージで撮る
映画的設定を用いるのは、雑誌を活き活きさせるため
ホテルをテーマに徹底的に遊びの世界をつくる
ロンドンで、透明人間が服を着たようなファションを撮る
ハワイのホテルから一歩も出ないで言葉のアートを撮る
帽子デザイナーの創造性を最大限活かす
ふざけた和風スタイリングを柔らかいトーンで仕上げる
コム デ ギャルソンとの良い関係性から生まれた東京タワー遊び
エンターテインメントにしないと雑誌ではない
[仲條正義と私]
伊藤佐智子「ファッションは移ろい、デザインは情け」
山本ちえ「媚びずに、自分の偏屈を通す」
ホンマタカシ「自由で贅沢で奇跡的な仕事」
第五章 理屈だけのデザインは退屈だ
デザインは知恵
デザインはゲーム
デザインは突き抜けないと、野暮になる
遊びがデザインの潤滑油
新人はフレッシュなことをやらないといけない
個性と人間性は別。我が強すぎると邪魔になる
展覧会は自分らしさを出せる機会
退屈と感じたらおしまい
マエストロの知恵とユーモア──編集者あとがき