日本人に愛される名作曲家、
シューベルトのコンパクトな評伝が登場!
《冬の旅》《魔王》《未完成交響曲》など教科書でもおなじみの作曲家、フランツ・シューベルト。「歌曲王」とうたわれながら、「アマチュア作曲家」と見られることも多かった従来のシューベルト像を一新する新たな評伝が登場!
合理的で現実的な戦略をもって、ベートーヴェンとは異なる「新しい、真っ直ぐに進まない音楽」を生み出した天才作曲家の実像を初めて描き出します。
気鋭の音楽学者による翻訳。
プロフィール
ハンス=ヨアヒム・ヒンリヒセン(Hans-Joachim Hinrichsen)
1952年ドイツのズュルト生まれ。チューリヒ大学音楽学教授。ベルリン自由大学でドイツ語学と歴史を学ぶ。1992年、シューベルトのソナタ形式についての博士論文(同大学)により、ウィーンの国際シューベルト協会から「シューベルト・グランプリ」を受賞。1998年、教授資格取得。1999年より現職。
著作に『フランツ・シューベルトの 器楽におけるソナタ形式の発展にかんする研究』(1994年)および『音楽の演奏解釈―ハンス・フォン・ビューロー』(1999年)をはじめ、『ベートーヴェン ピアノ・ソナタ』(2013年)、『ブルックナー交響曲』(2016年)など。編著に『ブラームス─ブルックナー』(2006年)、『ヨハン・ゼバスティアン・バッハと現在』(2007年)、『モーツァルトの生活世界』(2008年)などがある。
その他、シューベルトの自筆譜ファクシミリへの解説やアルカンジェロ・コレッリの楽譜編纂、ビューローとブラームスの書簡編纂など。19世紀ドイツ音楽を中心に、研究業績は深く幅広い。堀朋平(ほり・ともへい)
1979年生まれ。2002年、国立音楽大学音楽学学科卒業。2004年、同大学院修士課程音楽研究科修了。2013年、東京大学大学院人文社会系研究科後期博士課程修了(文学博士)。日本学術振興会特別研究員PDをへて現在、国立音楽大学非常勤講師。住友生命いずみホール音楽アドバイザー。
著書に『〈フランツ・シューベルト〉の誕生―喪失と再生のオデュッセイ』(法政大学出版局、2016)、共著に『バッハ キーワード事典』(春秋社、2012)、訳書に『フランツ・シューベルト──あるリアリストの音楽的肖像』(アルテスパブリッシング、2017)、共訳書にマーク・エヴァン・ボンズ『ベートーヴェン症候群──音楽を自伝として聴く』(春秋社、2022)など。
演奏家との対話や、他分野の知と交わる音楽研究をこころざしている。
CONTENTS
日本語版の読者へ
はじめに
第一章 シューベルトのウィーン
音楽都市ウィーン
創造の背景としての友人サークル
自由に創造した最初の作曲家?
ビーダーマイアーとフォアメルツのあいだで ─ 音楽における交際の文化
第二章 最初のチャレンジと早熟
諸ジャンルの体系的制覇
最初のトレードマーク ─ シューベルト歌曲なるもの
初期交響曲とその背景
第三章 危機、突破、そして確信
ベートーヴェン危機
豊かな断片
未完成における完成
第四章 めぐまれぬ愛 ─ 音楽劇
ジングシュピールから「英雄的・ロマン的オペラ」へ
舞台での成功と挫かれた希望
第五章 公のための作曲
大交響曲への道
室内楽と交響曲
委嘱と信仰告白のあいだで ─ 宗教声楽曲
第六章 若き日の後期作品
大規模な連作歌曲
作曲の新天地、そして最後のプロジェクト
後年の自負 ─ シューベルトと出版社
エピローグ シューベルト受容
訳者あとがき
附録 人名索引
作品索引
文献一覧 楽譜と作品目録/原典とドキュメント/定期刊行物と辞典類/研究書/論文