〈Booksウト〉

古楽でめぐるヨーロッパの古都

定価:本体2200円[税別]送料:国内無料

  • 四六判・並製 | 280頁
  • 発売日 : 2016年7月20日
  • ISBN 978-4-86559-143-9 C1073
  • ジャンル : クラシック/紀行/エッセイ
  • ブックデザイン:金子裕

街角から古(いにしえ)の響きが聞こえてくる──
西洋音楽が誕生し、楽器の音や歌声が街にあふれた時代へ。
アルテスの贈る古楽本シリーズ〈Booksウト〉、創刊第1弾!

西洋音楽が生まれた中世から18世紀末まで、ヨーロッパの街と人と音楽とのつながりをたどる紀行エッセイ。
訪れるのは、ヴェネツィア(イタリア)やアントウェルペン(ベルギー)といった有名都市から、ザンクト・ガレン(スイス)、クレモナ(イタリア)、ツェルプスト(ドイツ)などの隠れた名都、さらにはキプロス島や中南米まで足を伸ばします。
歴史と旅をこよなく愛するチェンバロ奏者が案内するひと味違った音楽旅行へようこそ!

プロフィール

  • 渡邊温子(わたなべ・あつこ)
    国立音楽大学卒業後、ヴュルツブルク音楽大学に留学。チェンバロを有田千代子、グレン・ウィルソン諸氏に師事。2002年より3年間のワシントンDC滞在中、アメリカ古楽界を牽引する演奏家と共演、ワシントン古楽祭の立ち上げに携わる。現在は東京を中心に演奏活動をおこない、バロックアンサンブル〈バロックランチの会〉、朗読とのユニット〈風流楽〉の主宰および音楽監督をつとめる。2021年CD『少女とぼろぼろの文庫本』、2025年CD『フランスいにしえの吐息』をリリース。
    ある地域の音楽の発展を歴史や社会的背景とともに探ることをライフワークとし、2016年、著書『古楽でめぐるヨーロッパの古都』(アルテスパブリッシング)を上梓。またメールマガジンや公開講座を通じてチェンバロと古楽の魅力をひろめる活動を積極的に展開。
    日本チェンバロ協会会員。同協会編『チェンバロ大事典』(春秋社)執筆・編集。武蔵野学院大学非常勤講師。タニタ楽器音楽教室チェンバロ科講師。無料メルマガ「月刊バロック通信」配信中。
    ブログ「チェンバロ弾きのひとりごと」:http://cembalonko.exblog.jp/
    X(旧Twitter):@AtsukoWatanabe
    Facebook:https://www.facebook.com/atsuko.watanabe.353

CONTENTS

まえがき

第1章 ザンクト・ガレン[スイス]──修道院に聖歌がひびく
雨の中央駅
ザンクト・ガレンの発祥
キリスト教を広めた国王
大聖堂と図書館
修道院の写本製作
グレゴリオ聖歌
虚弱なノトカー
新しい聖歌
頑強なトゥオティッロ

第2章 ニコシア[キプロス]──地中海の果てのフランス
ヴィーナスの島キプロス
ニコシアにフランス宮廷ができるまで
宮廷文化の開花
ニコシアの宮廷音楽
フランスでの音楽の推移
演奏されなかった写本

第3章 アントウェルペン[ベルギー]──交易と商業で栄えた街
三〇〇年前の音に触れる
アントウェルペンの黄金時代
市民たちが支えた街の音楽
チェンバロ界のストラディヴァリ
ルッカースの企業秘密
贋作の多い製作家
あるオルガニストの逃亡
ブルのアントウェルペンでの活躍
ヨーロッパの聖歌隊員養成所
大聖堂のオルガンとカリヨン
商業的楽譜出版の元祖

第4章 リューベック[ドイツ]──「夕べの音楽」とハン諸都市
運河に囲まれた街
聖マリエン教会のオルガン
ハンザ都市リューベック
祭壇で埋め尽くされていた教会
「夕べの音楽」のはじまり
リューベックに至るまで
「夕べの音楽」の発展
バッハが北ドイツに見ていたもの
オルガン製作家について

第5章 セビーリャ[スペイン]──新世界に開かれた街
オペラの舞台・セビーリャ
異文化に開かれた窓
イスラム建築の宮殿で
モスクで弾いた鍵盤の巨匠
ローマ教皇お抱えのセビーリャ人
海賊に襲われた音楽家

番外編 プエブラ[メキシコ]──インディオの聖歌隊
メキシコの聖堂に響いた音楽
スペイン人の入植と宣教活動
パディーリャのプエブラでの活躍
プエブラの成立とその特殊性
芸術のパトロン・メンドサ大司教

第6章 クレモナ[イタリア]──ヴァイオリン製作の聖地
ヴァイオリンへの憧れ
中世の面影を残す街
ヴァイオリンの街で育った声楽曲の巨匠
片田舎から芸術の街へ
モンテヴェルディとストラディヴァリの間に
ストラディヴァリの師匠は?
ひとり勝ちの名匠
逆境を転機に

第7章 ツェルプスト[ドイツ]──歴史に翻弄された街
マクデブルクからツェルプストへ
旧東ドイツの小さな街で
市壁と塔に囲まれた街
七〇年にわたる宮殿建設
宮廷楽団の確立
国際ファッシュ協会
宮廷楽長までのあゆみ
ファッシュと宮廷楽団
エカチェリーナ二世の誕生
宮廷の所蔵楽曲リスト
ツェルプストの悲劇

第8章 マンハイム[ドイツ]──モーツァルトの就職活動
碁盤の目の街並み
モーツァルトが訪れた街
カール・テオドールの宮廷音楽
選帝侯の生い立ちとフランス趣味
ヨーロッパ最強のオーケストラができるまで
「神童」のシュヴェツィンゲン・デビュー
モーツァルトの就職活動

第9章 ヴェルサイユ[フランス]──太陽王が創造した宮殿
狩猟の城から王の居城へ
太陽神アポロンの城館
ルイ一四世の宮廷生活と音楽
フランスにやって来たイタリア少年
宮廷音楽家の頂点へ
ヴェルサイユの饗宴
オペラ上演権をめぐって
音楽悲劇とは
オペラが上演されるまで
王を称える題材の変化
小アパルトマンの整備
公式行事と夜会
宮廷とクラヴサン
クープラン一族

第10章 ヴェネツィア[イタリア]──聖俗が交錯する街
アドリア海の女王
この上なく晴朗な共和国
サン・マルコ寺院
サン・マルコ寺院の楽長として
オペラの成功と晩年
オペラの誕生
世界初の公開オペラ劇場
赤毛の司祭
劇場の跡をめぐる
女子養育院での演奏会
女子養育院でバスを歌ったのは
ヴェネツィアのもう一つの顔
養育院の背景にあるもの

あとがき
参考文献