弱った身体と音楽の豊かさに橋をかけるためのヒントが隠されている──『モーストリー・クラシック』に『音楽と病のポリフォニー』の書評掲載

『モーストリー・クラシック』12月号の「book」コーナーに小林聡幸著『音楽と病のポリフォニー──大作曲家の健康生成論』の書評が掲載されました。評者は音楽評論家の澤谷夏樹さん。

 この本の面白さは第5章からにわかに加速する。病と創造性とに密接な関係が“ない”例のほうに、視点を移していくのだ。とりわけ、第6章のショスタコーヴィチの創作史は興味深い。スターリニズムの過酷な環境下、統合失調基質を抱えながら、精神的には大きな破綻を来すことなく生き、健筆を振るった。
 [略]その弱り切った身体と、生み出された音楽の豊かさとの間には深い谷が横たわっている。本書の第5章以降には、この隔たった両岸に橋をかけるためのヒントが隠されている。

本書のこれまでの病跡学ともっとも異なる点は、まさにここにあるかもしれません。そこを捉えていただいてうれしいかぎりです。