三輪眞弘さんが芸術選奨文部科学大臣賞を受賞!

三輪眞弘音楽藝術

地震の災害情報に胸痛めつつのお知らせとなりますが、たいへんめでたいニュースが入ってきました。作曲家の三輪眞弘さんが平成22年度(第61回)芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)を受賞! 主な贈賞理由に弊社刊『三輪眞弘音楽藝術』の出版を挙げていただいています!
asahi.com – 芸術選奨、31人受賞 加山雄三さん、平原綾香さんら
http://www.asahi.com/culture/update/0311/TKY201103110702.html

贈賞理由
三輪眞弘氏は、音楽の概念を根本から問い直す作業を通じて新しい音楽の可能性を探求する試みを、最先端のメディアを駆使して重ねてきた。平成22年の新刊『三輪眞弘音楽藝術──全思考1998─2010』には、人間の知覚システムを再考しつつ時間空間の斬新な体験を提案する方法論が集積され、真に前衛的な音楽創作論として話題を集めた。地域と密着した「NEO都々逸」の創作やフォルマント兄弟のプレゼンテーションも秀逸であった。

『三輪眞弘音楽藝術』の冒頭には、このような文章があります。

コンピュータ音楽であれメディアアートであれ、「装置を使った(芸術)表現」について何かを語る際に、ぼくらは、ある装置を電源コンセントにつなぐことから始めているという事実に注目しようとはしない。またさらに、その「コンセントの向こう」には、つまり電力が安定的に供給される背景には、地球規模のエネルギー問題、たとえば原子力発電所、核問題、石油の利権、投機マネーはもとより中東戦争に至るまで、グローバル化した世界のあらゆる難問が果てしなく連なっていることを意識することはまずないはずだ。もちろんそんなことを考え始めたら「装置を使った(芸術)表現」どころか、平穏な日常生活でさえ不可能になってしまうので誰も「言わないことにしている」わけだ。しかし、だからといってそれが現代の音楽・芸術が直面する未曾有の状況と無関係だと言える理由にはならないだろう。いや、それどころか現代に生きるぼくらの価値観や世界観、そしてひとりひとりの心のありようにこの現代社会の複雑な状況が深く結びついていないはずはないのだ。
──「目次の前に」より

震災が起こり、被災地はもとより、それ以外の地域でも「コンセントの向こう」をいやがうえにも意識しなければならない状況が現出しています。このような時代に、はたして芸術に何ができるのか──三輪さんの問いかけはいっそうの重みをもってわれわれに迫ってきています。

[木村]