音楽のカルチュラル・スタディーズ

定価:本体3800円[税別]送料:国内無料

  • A5判・並製 | 416頁
  • 発売日 : 2011年2月28日
  • ISBN 978-4-903951-40-9 C1073
  • ジャンル : 音楽研究/社会学
  • 装丁:山田英春

在庫切れ

音楽研究を解放する!──
気鋭の学者26名が切り拓く新しい音楽への視座。
音楽をテーマにした初めてのカルチュラル・スタディーズ論文集、待望の日本語版刊行!

本書は、音楽研究を大作曲家の楽譜研究や伝記読物といった旧弊から解放し、楽譜や音楽用語に頼らずに、さまざまな学問領域を横断しながら、音楽を文化としてとらえなおす試みである。収録された多彩な論考は、いずれも音楽を社会的活動として理解することから出発し、たがいに重なり補いあう概念のパッチワークを提示している。
第1部では音楽と文化・社会・歴史との関係を俯瞰的にとらえ、第2部では個別のテーマや概念を集中的に議論し、音楽研究の今後向かうべき方向を示す。

◎本書に登場するキーワード
人類学、社会学、生物学、民族誌、歴史記述、意味論、記号論、ポスト・モダニズム、アフォーダンス、アイデンティティ、セクシュアリティ、ジェンダー、テクスト、身体性、他者性、消費、植民地主義、人種主義、ディアスポラ、政治、産業、教育、民族問題etc.

プロフィール

  • マーティン・クレイトン(Martin Clayton)
    オープン・ユニヴァーシティ音楽学部勤務。「音楽文化研究部門」の部長もつとめる。1998年から2001年まで英国民族音楽学会誌(British Journal of Ethnomusicology)の編集長(Suzel Ana Reilyと ともに)。近著にTime in Indian Music: Rhythm, Metre and Form in North Indian Rag Performance (Oxford University Press, 2000)。
    ウェブページ

  • トレヴァー・ハーバート(Trevor Herbert)
    オープン・ユニヴァーシティ音楽学教授。金管楽器の歴史、用法、文化およびウェールズ音楽について執筆している。

  • リチャード・ミドルトン(Richard Middleton)
    イギリス、ニューカッスル・アポン・タイン大学音楽学教授。著書にPop Music and the Blues (1972)、Studying Popular Music (1990)、Reading Pop (2000)。

  • 若尾 裕(わかお・ゆう)
    神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。日本音楽即興学会世話人代表。専門領域は臨床音楽学や即興演奏。音楽療法も含め、現代音楽後の新しい音楽の創成が今の研究テーマ。著書に『奏でることの力』(春秋社)、『音楽療法を考える』(音楽之友社)など、CDにジョエル・レアンドルと共演した『千変万歌』(メゾスティクス)など。

  • 卜田隆嗣(しめだ・たかし)
    民族音楽学・音楽人類学。著書『声の力』(弘文堂)など、論文“Identity manipulation and improvisatory singing in central Borneo” (Senri Ethnological Reports 65)など。文学博士。大阪教育大学准教授。

  • 原真理子(はら・まりこ)
    英国エクセター大学社会学部博士後期課程および神戸大学人間発達環境学研究科博士後期課程在籍中。ニューヨーク州マンハッタンヴィル大学にてミュージック・マネジメント専攻の学士号、神戸大学修士号取得。専門は音楽療法・コミュニティ音楽活動の臨床社会学研究。英国エクセター大学では、音楽社会学研究グループ(SocArts)に在籍し、認知症者とケア従事者を対象にした草の根音楽活動のエスノグラフィ調査を実施。

  • 三宅博子(みやけ・ひろこ)
    神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。学術博士。日本音楽療法学会認定音楽療法士。兵庫県認定音楽療法士。博士論文「音楽療法の政治性に関する研究:〈制度〉と〈生〉の間から」では、音楽療法における音楽行為の意味を政治性という視点から問いなおし、より開かれた音楽療法のあり方へ向けて考察をこころみた。現在は、障害児・者や神経難病患者との音楽即興実践をおこなうとともに、そこで生まれる表現の様態や意味にかんする研究をおこなっている。

CONTENTS

序 章 音楽研究と文化の思想[リチャード・ミドルトン]

I──音楽と文化
第1章 音楽と生物文化的進化[イアン・クロス]
……人はDNAゆえに歌うのか?
第2章 音楽学、人類学、歴史[ゲイリー・トムリンソン]
……音楽とうたは別物?
第3章 音楽と文化──断絶のヒストリオグラフィ[フィリップ・V. ボールマン]
……植民地主義と人種主義。西洋人はいかに音楽を記述してきたか。
第4章 音楽の比較、音楽学の比較[マーティン・クレイトン]
……異なる音楽は比較できるか?
第5章 音楽と社会的カテゴリー[ジョン・シェファード]
……音楽はどのくらい社会を映し出しているか?
第6章 音楽とその媒体──新しい音楽社会学に向けて[アントワーヌ・エニョン]
……バッハは現代音楽?
第7章 音楽と日常生活[サイモン・フリス]
……音楽がうるさいわけ。
第8章 音楽・文化・創造性[ジェイソン・トインビー]
……名作は天才が作るわけじゃない。
第9章 音楽と心理学[エリック・F. クラーク]
……アフォーダンス理論を音楽研究に生かす。
第10章 主観礼賛! 音楽・解釈学・歴史[ローレンス・クレイマー]
……西洋音楽を支えてきたのは音楽をめぐるおしゃべり?
第11章 歴史音楽学はまだ可能か?[ロブ・C. ウェグマン]
……音楽史の罪悪。
第12章 社会史と音楽史[トレヴァー・ハーバート]
……おどる国民、奏でる労働者。

II──さまざまな論点から
第13章 音楽の自律性再考[デイヴィッド・クラーク]
……不滅の名曲はありえないのだろうけど……。
第14章 テクスト分析か、厚い記述か?[ジェフ・トッド・ティトン]
……いかに他者の音楽を理解するか?
第15章 音楽、体験、そして情動の人類学[ルース・フィネガン]
……音楽の情動はそれぞれちがう。
第16章 音楽の素材、知覚、聴取[ニコラ・ディベン]
……音の認知は文化によって異なる。
第17章 パフォーマンスとしての音楽[ニコラス・クック]
……譜面は音楽じゃない、パフォームされたものが音楽だ。
第18章 ネズミと犬について──世紀末における音楽、ジェンダー、セクシュアリティ[イアン・ビドゥル]
……フランツ・カフカは音楽をどうとらえたか。
第19章 差異を糾弾する──アフリカ民族音楽研究批判[コフィ・アガウ]
……差異からとらえられてきたアフリカ音楽とその政治性。
第20章 名称がもたらす差異──アフリカン─アメリカン・ポピュラー音楽にかんする2つの事例[デイヴィッド・ブラケット]
……ポピュラー音楽におけるネーミングの力。
第21章 人々とは誰か?──音楽とポピュラーなるもの[リチャード・ミドルトン]
……国民の音楽という20世紀の夢。
第22章 音楽教育、文化資本、社会集団のアイデンティティ[ルーシー・グリーン]
……音楽教育は管理のツールか?
第23章 楽器のカルチュラル・スタディー[ケヴィン・ダウ]
……楽器は生き方をあらわす。
第24章 民族音楽学における「ディアスポラ」の運命[マーク・スロウビン]
……流れ者の音楽のもち方。
第25章 グローバリゼーションと世界音楽の政治学[マーティン・ストウクス]
……新自由主義下のワールド・ミュージック。
第26章 音楽と市場──現代世界の音楽経済学[デイヴ・レイン]
……なぜもうからないのに音楽家は減らないのか。