カフェでの集会、殴り合い、差別と迫害、新聞沙汰──
「音楽の革命」の真実を膨大な資料と図像で描く比類なきドキュメント。
荒ぶる芸術家たちの青春群像がいまよみがえる!
世紀末ウィーンにおいて、演劇、音楽、建築、工芸、彫刻などの分野で同時多発的な革新が起こった。
「若きウィーン」を名乗り、「モデルネ(近現代)」の温室たるこの都市を舞台に、血気盛んな活動を繰りひろげる若手芸術家たち。
本書は「新ウィーン楽派」の首領にして、20世紀音楽最大のオリジネイターである作曲家アーノルト・シェーンベルク(1874–1951)を中心に、「若きウィーン」を標榜した芸術家たちの活動を、膨大な同時代資料と証言、そして数多くの図像によってあとづけた画期的なドキュメント。
シェーンベルク生誕150年記念出版。
●巻頭カラー地図(16ページ):シェーンベルクゆかりの地をガイド
●カラー口絵(8ページ):絵画の分野でも異才を発揮したシェーンベルクの美術作品を掲載
●その他、モノクロ図版60点掲載
▼ためし読みはこちらから▼
https://hanmoto9.tameshiyo.me/9784865593006
プロフィール
テレーゼ・ムクセネーダー(Therese Muxeneder)
ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学でヴァイオリン、ザルツブルク大学で音楽学ならびにドイツ文学を学ぶ。ザルツブルク、国際モーツァルテウム財団司書(1993–97)をつとめたのち、1997年よりアーノルト・シェーンベルク・センター、ウィーンにてコレクションを管理するかたわら、著述家、編集者、展覧会キュレーターとして活躍。ウィーン国立音楽大学非常勤講師。阿久津三香子(あくつ・みかこ)
東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。国費派遣留学(ドイツ、ハイデルベルク大学)。明治学院大学大学院文学研究科博士前期・後期課程修了(博士、芸術学)。DAAD「独日韓大学間提携事業助成金」によりワイマール、バウハウス大学短期ドイツ語研修(2010、2012)。
「音楽のある展覧会」(サントリーホール ブルーローズ、2012、ホテルオークラ東京 別館、2019)講演通訳。
Tōru Takemitsu: Globalisiertes Komponieren ― Text, Kontext, Deutung(Hrsg. Markus Bandur und Rainer Schmusch, edition text+kritik, München, 2024)の独訳を一部担当。
日本音楽学会会員、日本アルバン・ベルク協会会員樋口隆一(ひぐち・りゅういち)
1946年東京生まれ。音楽学者・指揮者。明治学院大学名誉教授。音楽三田会会長。一般社団法人樋口季一郎中将顕彰会会長。
慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒、同大学院博士課程在学中にドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてドイツ留学。テュービンゲン大学でG.フォン・ダーデルセン、U.ジーゲレに師事。1979年、『新バッハ全集』の教会カンタータ巻(I/34)の校訂により同大学哲学博士。A.スムスキーに指揮法を師事し、シュトゥットガルト聖母マリア教会で合唱指揮者をつとめた。
帰国後、音楽学者、指揮者、評論家として多彩な活動を展開。1998年、ウィーン大学客員研究員。創立時のアーノルト・シェーンベルク・センターでシェーンベルクのバッハ資料を調査。2000年、明治学院バッハ・アカデミーを設立し、芸術監督に就任。2001年、明治学院大学で「シェーンベルク没後50年」展、国際シンポジウム「シェーンベルクと様々な伝統」を開催、《ピエロ・リュネール》演奏会を指揮、その功績により2002年、オーストリア学術芸術功労十字章を受章。2006年、ライプツィヒ国際バッハ音楽祭に出演したほか、13年にはベルリン・コンツェルトハウスにて山田耕筰《秋の宴》、高田三郎《水のいのち》をドイツ初演。
『バッハ』(新潮文庫)、『バッハ カンタータ研究』、アーノンクール著『古楽とは何か』、ノヴァーク著『ブルックナー研究』(以上音楽之友社)、『バッハから広がる世界』、『バッハの人生とカンタータ』(以上春秋社)、バッハ《マタイ受難曲》、『バッハ:カンタータ傑作集』、ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》(以上ユニバーサル)、フォーレ《レクイエム》(オクタヴィア)など著訳書CD多数。
京都音楽賞研究評論部門賞、辻荘一賞、オーストリア学術芸術功労十字章、テオドル・ベルヒェム賞(ドイツ)。国際音楽学会日本代表理事、同副会長を歴任。第20回国際音楽学会東京大会組織副委員長・プログラム委員長(日本政府観光局国際会議開催貢献賞受賞)。
CONTENTS
[カラー地図]ウィーンのシェーンベルク
本書の登場人物
はじめに
第1章 若きウィーンの音楽家と音詩人たち
若きウィーンの音詩人たち(リヒャルト・シュペヒト)
第2章 若きウィーンの円卓
アーノルト・シェーンベルク(アルトゥール・カハネ)
第3章 「カフェハウスでは文学をめぐって殴り合った」
文芸夜想曲―クラウス゠フリートマン事件についての寸評(ハンス・リープシュテックル)
第4章 若きウィーンの演劇とコンサート
若きウィーン劇場(フェーリクス・ザルテン)
第5章 「反ユダヤ主義の中心地」
ウィーンの若きオーストリア・ユダヤ人芸術家(アーノルト・シェーンベルク)
第6章 アーノルト・シェーンベルクとカール・クラウス
カール・クラウスにかんする覚書(アーノルト・シェーンベルク)
第7章 アーノルト・シェーンベルクとアドルフ・ロース
アドルフ・ロースにかんして(アーノルト・シェーンベルク)
これぞアーノルト・シェーンベルク(アドルフ・ロース)
第8章 アーノルト・シェーンベルクとヘルマン・バール
若きオーストリア(ヘルマン・バール)
第9章 ある若きウィーン人は創作する
新しい地平、あらゆる規則をこえて(パウル・シュテファン)
アーノルト・シェーンベルクのもとで(パウル・ヴィルヘルム)
註
日本語版監修者あとがき(樋口隆一)
訳者あとがき(阿久津三香子)