自然への愛、信仰、畏怖を糸口に、
クラシックの名曲の謎と魅力にせまった知的冒険の書!
「ラ・フォル・ジュルネ2016」、日仏共通オフィシャルブック!
鳥のさえずり、波のリズム、葉叢をわたる風、雷のとどろき。
太古の人びとは、自らを取り巻く果てしない音の世界に心惹かれたはずです。
そう、最初に音楽を奏でたのは自然でした!
自然の中に遍在する美は、やがて音楽化され、多くの作曲家たちによって描写されるにいたりました。
さまざまな風景や光、 色彩、そして詩情あふれる四季……
私たちの耳をつねに虜にする自然の魅力が、声楽や器楽によってあまねく表現されるようになったのです。
本書には、2016年の「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭で演奏される数々の楽曲への理解を深めるための「鍵」が、ふんだんに詰まっています。
──ルネ・マルタン(「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭 アーティスティック・ディレクター)
「ラ・フォル・ジュルネ」芸術監督ルネ・マルタンの発案により、気鋭の音楽学者エマニュエル・レベルが書き下ろした同音楽祭初の「日仏共通オフィシャルブック」。
古代から音楽のインスピレーションの尽きせぬ源泉であった自然をめぐって、音楽家たちがいかに創意をこらした作品を残してきたか、そしていまや自然環境の一部となった音響は人間になにをもたらすのか──さまざまなテーマを逍遙しながら、クラシック音楽の謎と魅力にせまる!
プロフィール
エマニュエル・レベル Emmanuel Reibel
高等師範学校、パリ国立高等音楽院卒業。文学博士、音楽学者。現在フランス大学学院研究員。2014年、『音楽はいかにして“ロマンティック”になったのか──ルソーからベルリオーズへ』(Fayard, 2013)により、アカデミー・フランセーズのフランソワ=ヴィクトル・ヌリ賞を受賞。主な著書に『ファウスト』(Fayard, 2008)、『ベルリオーズ時代の音楽批評の文体』(Champion, 2005)、『ロマン派の音楽家たち』(Fayard/Mirare, 2003)、『ヴェルディ』(Gisserot, 2001)、『プーランクの協奏曲』(Zurfluh, 1999)がある。西久美子(にし・くみこ)
日仏英翻訳者。2005年、東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。2008年、リヨン第2大学修士課程修了。訳書にJ.‐J.エーゲルディンゲル『ショパンの響き(小坂裕子監訳、音楽之友社)、E.レベル『ナチュール 自然と音楽』、C.パオラッチ『ダンスと音楽』、E.バリリエ『「亡命」の音楽文化誌』(以上アルテスパブリッシング)がある。
CONTENTS
日本版に寄せて(ルネ・マルタン)
序──イシスのヴェールとオルフェウスの竪琴
自然を象徴する女神イシス/科学から芸術へ/自然──多様な意味をもつ概念
第1章|アルカディア──ヴィヴァルディの《四季》をめぐって
描写音楽/[《四季》のソネット]/自然の模倣/音楽による模倣――狩りと鳥のさえずりを中心に/羊飼いとニンフ/オルフェウスとパストラーレ/自然の象徴
第2章|庭園──ラモーからルソーまで
四大元素:混沌から調和へ/宇宙の仕組み/「自然にもとづいた」音楽/渦巻/自然、芸術、人工物/フランス式庭園からイギリス式庭園へ
第3章|雷雨──ベートーヴェンの「田園」交響曲をめぐって
自然とのふれあい/自然災害の現実味/心の中に吹く嵐/崇高なるものの体験/音画
第4章|風景──ロマン主義と自然
山と森/絶景の旅/国々を象徴する川/夜の風景/エオリアン・ハープ
第5章|動物学的間奏曲──生き物たちの謝肉祭
動物たちの鳴き声/寓話の中の動物たち/自然主義と動物たち/白鳥とナイチンゲール
第6章|風・水・火・土──象徴主義と原始主義のあいだ
自然とテクノロジー/風と自由/水と夢/火と近代化/土と未開
第7章|環境──野外の音楽から音のエコロジーまで
鳥類学者・兼・作曲家/マイクを携えて/自然と電子音響音楽/世界旅行へ/サウンドスケープと音のエコロジー/オペラは地球を救う?
第8章|宇宙──音楽のモデルとしての自然
作曲書法と自然の類似/植物/星に耳を澄ませて/普遍概念
結び──自然は「ユートピア」なのか?
訳者あとがき
参考文献
人名索引
◎コラム
ヴィヴァルディ以降の「四季」
フランスのクラヴサン音楽と自然
ベートーヴェンの時代の「田園交響曲」
19、20世紀の夜の音楽
音楽愛好家のためのミニ動物事典
オーケストラが奏でる動物たち
19、20世紀の水にまつわる音楽作品
太陽と月
花が彩る音楽の世界