ウェブマガジン『TURN』に岡村詩野さんによる坂本龍一『ピアノへの旅』書評が掲載されました(画像を拝借しています)。
「ピアノには全く縁のない人生」だという岡村さんは「きっと坂本はピアノがたまらなく好きだったのだろう」と書きながら、たとえばこんな風に本書ならではの魅力を端的に語ってくださっています。ちょっと長いですが引用します。
鍵盤楽器の歴史や音の鳴る仕組みも理解できる、初心者にも大変優しい本だし、何より伊東信宏、上尾信也各氏との対話がメインなので、テーマは専門的ながらも坂本の話し言葉が好きな私のようなファンには、坂本のいつになく丁寧でたおやかな話し振りが味わえる本でもある。とりわけ、伊東と上尾に教えを受けるような「第2部 ピアノの起源を探る」は、ピアノ(とその話)の前では素直になる坂本の“知るを学ぶ姿”が表出されていて、坂本関連の書籍の中でも1、2位を争うほどになかなか清々しい。
ほかにも、坂本さんが(しばしば苦笑しながら)挙げるピアノの特性のうち、音が粒になってしまうことにフォーカスしたり、現代の生活ではクラヴィコードのような微細な音が聞き取りにくくなっていることなどに触れたりしながら、「創作という意思の範囲を超えているように聞こえる」坂本さんの晩年の作品の背後にあるものを教えてくれる本として評価していただきました。
アメリカ音楽を中心に執筆してらっしゃる岡村さんにレビューしていただけて本当に嬉しいです。どうもありがとうございました。