月刊『あいだ』に『日本メディアアート史』の書評掲載

『あいだ』の会が発行する美術雑誌、月刊『あいだ』221号(2015年6月20日発行)に、馬定延さんの『日本メディアアート史』の書評が掲載されました。評者は国立新美術館美術資料室の伊村靖子さん。「「メディア現象」を括ってみるとき──現代美術の枠組みを問い直すために」と題し、3ページにわたる充実した書評です。

 私が本書に共感するのは、成立背景の違いによっていくつもの位相に分かれていた「メディアアート」を通史としてまとめあげることにより、議論の俎上に乗せるという役割を果敢にも引き受けたことだ。敢えて言うならば、「メディアアート」に関わる当事者には相対化できなかった視座を与えることによって分断されていた各動向を束ね、メディアアートを語る位相を変えたことに本書の意義はある。本書において「メディアアート」は単に「歴史」になったのではない。本書の英文タイトルの「A Critical History of Media Art in Japan」を踏まえるならば、これを皮切りに「メディアアート」についての批評は活性化するはずだ。(略)……現代美術が常に新たな命名とともに過去を断絶し、他の動向との差異を強調しつつ展開してきたことを思い起こすならば、表現の定義がその時点で本質的に抱え込んでしまう限界を現時点から批評的に再考することこそが今、必要なのではないだろうか。その意味で、私は本書の姿勢を、日本の現代美術の枠組みを問い直すためのひとつの端緒として評価したい。

と、ひじょうに深い共感をもって、著者の本書にかけた思いを汲み取ってくださっています。ありがとうございました。

[木村]